子ども達が寝静まった夜、はネノフの指示でお湯を沸かした。
 それから、昼のうちに食器棚の奥から取り出しておいた30客以上のティーカップを並べ、そこにお茶を注ぐ。
 普段は日の出より少し前に起きだし、日が沈むのに合わせて眠るような生活なのだが――――――大人達が夜更かしをして仕事をするにしても、今夜は遅すぎた。まるで子ども達が寝静まるのを待ったかのような時間に、子どもの数以上のティーカップを用意して、いったい何を……とは首を傾げる。

(……お客さんでもくるのかな?)

 ティーカップといえば、人が飲み物をのむ食器だ。それに茶を淹れて用意しているのだから、そこから想像できる物は『来客』であろう。
 ひい、ふう、みい……と並べたカップの数をかぞえ、は瞬く。
 村人が全体で何人いるのかは知らないが、これから集会でも行うのだろうか?
 夜という時間帯と来客にしては多すぎるカップに、がそう結論を出すと、戸口からネノフが顔を覗かせた。

「……、準備はできた?」

「はい」

 すべてのカップに茶が注がれている事を確認し、はネノフに応える。数が多いため盆は2つになってしまったが、ネノフと運べば問題ない。
 の返事に、ネノフは台所の中へ入ると盆を1つ持ち上げた。はもう一つの盆を持ち上げ、先に歩き始めたネノフに続く。

 お茶の載った盆を持ち、暗い廊下を歩くネノフが外に出ようとしている事に気が付き、は首を傾げた。