かきたいほーだいい。
イオスの勾玉を直すために見つけだした召喚獣が、こんな形で役に立つとは思わなかった。
ユウナはレイムの傍らに寄り添い、切り落とされた腕と肩の傷口を重ねる。
天使を召喚しての『回復』では、レイムは癒せない。
レイムの体は、元から『生きて』はいなかったのだから。
けれど、『修復』はできる。
死者の体を、整えるぐらいは。
「……ユウナさん、お気づかいなく」
「気にしますっ!」
銀の瞳に召喚術をやんわりと断られ、ユウナは眉を寄せる。
デグレアにいた頃の自分であれば、どんな状況であってもレイムの申し出を受け入れることしかできなかったが。
今のユウナは違う。
嫌なことは、嫌だと言えるし、自分がやりたいと思った事は、例えレイムに逆らってでも、貫く事ができる。
そして今、ユウナが一番やりたいことは――――――
「レイムさんは死んじゃダメなんです。
マグナさんの側にいてくれなきゃ、ダメなんです」
血の流れぬ傷口を押さえ付けながら、ユウナは必死に呼び掛ける。
血の通わぬ体と、色のない瞳に。
例え、その正体が悪魔であれ、なんであれ、マグナにとっては掛け替えのない存在なのだから。
「……馬鹿な娘ですね、本当に」
切り落とされていない方の腕を伸ばし、レイムはユウナの髪を梳く。
いつか見せた、マグナを見守る時と同じ、慈愛にみちた瞳で。
「……マグナが、あなたを呼び出した時につかったサモナイト石は、持っていますか?」
「……右の、ポケットに」
レイムの意図が汲み取れないながらも、ユウナは正直に答える。
レイムの傷口を押さえているため、自分でポケットから出すことはできなかったが。
身動きの取れないユウナの変わりに、レイムがスカートのポケットを漁り、赤いサモナイト石を取り出した。
「……レイムさん? 何を、するつもりですか?」
まさか、この後におよんでまだ戦おうというのか。
そうも思ったが、柔和なレイムのまなざしに、すぐにそれが間違いであることは判った。
「あなたは、『おかえり』なさい」
「え?」