目の前には『美』と称せるような青年達の中に、落ち着いた物腰の中にも『少女』の部分が見え隠れする女性が一人、それは楽しそうに話している・・・





そんな『場面』を、私は見ていた・・・







手ノ届カナイ  遠イ 遠イ  『世界』

記憶ニ薄イ   古イ 古イ  『時間』














わずかな 希望=上=










天高く、地上を照らしていた太陽も大きく傾き、世界が夕焼け色に染まりつつある


夕食の準備には少し早い、この微妙な時間

何軒かの家の中でも一際以上に大きな屋敷『鶴亀家』に、一人の訪問者が現れる







「ごめん下さ〜い」







訪問者は、二十歳前半の若い女性

腰までの長い金髪の髪、金髪と言っても、淡い淡いクリーム色をしており、それに合わせるような薄い水色の瞳

体全体のバランスが程よく整っており、秀でて目立つものはないにしろ、全く劣っているわけでもない


女性を出迎えた羅苑は素直に『美しい』と感じた





「・・・あの・・どちら様で?(こんな綺麗な(ヒト)、俺の知り合いにはイネェゾ?)」


羅苑が遠慮がちに尋ねると、女性はご丁寧にも、深々と頭を下げる


「申し遅れました。(ワタクシ)と申します。
佳嗣さんはいらっしゃいますでしょうか?」


それにつられた羅苑も、いつになく、丁寧に挨拶を返す


「あぁ、それは御丁寧に。俺は羅苑、この屋敷の主治医をしてます」
「まぁ、それはそれは御丁寧に・・・」


切がなく挨拶を続ける二人のところへ、のん気な声が割り込んでくる


「あれぇ?何??お客さん?」
「んぁ?架愁か。あぁ、こちらさんって言って、佳嗣のお客さんだって」
「佳嗣の?」


架愁と呼ばれた青年は、を頭の天辺から、足の先までを何度か見つめる
そして、その行為を2,3度続けた後、ニッコリと微笑み・・・


「ようこそ、鶴亀家へv僕は架愁。佳嗣なんて放っておいて、一緒にお茶しまっ―――?!!」


確りとの手を握り、ナンパなる物をおっぱじめる架愁
それにすかさず、怒りの鉄槌を下すは、自称『皆の優しいお医者様』・羅苑




***




架愁に鉄槌を下した羅苑は、を屋敷に上がらせ、佳嗣のいるところまで案内をする


「本当、スミマセンね。架愁の奴には後でキツク言っておきますから(佳嗣が)」
「い、いえ。ソレより、いいんでしょうか?架愁さん床にのめり込んでますが・・・」
「大丈夫、ああ見えて、殺しても死ぬような奴じゃないから。暫くすると、復活「痛いじゃないか、羅苑」・・・・しただろ?」


両者の間に不穏な空気
の髪が数本、引きつけられるように浮き上がっている(静電気?)



そこへ聞こえてくる幼い赤子の泣き声と幼い少女の声


「・・・んぎゃぁ・・んぎゃぁ・・・
キャハハ、まぁろ、かわいい〜



「・・・?随分と幼い子がいらっしゃるのですね〜?」


の言葉に、いがみ合う羅苑と架愁は「あぁっ!!」と、声を出す


「やべぇっ!俺、佳嗣に新しいオムツ持って来いって言われてたんだった!」
「僕も、栗杷さまにお菓子・・・」



思い出したら即行動の二人はお客の案内もそっちのけで、奥へと姿を消す・・・






一人、その場に取り残された客人・は呆然とし、二人の消えた方向を見つめる


「・・・・・・普通、お客を放って行く?(どうしろっての?)」


先ほどの丁寧な口調はどこへやら・・・内心、二人の悪態を突きつつ、口元を手で軽く覆う・・・







「・・・彼等らしいけれど・・・ね?クスクス・・・(さぁて、『佳嗣さん』とやら・・・いいえ、『天眠』のところへ行こうかしら・・?)」








  続く






2004,8,14