本日はお休みです。
折角なので、時間を有意義に使ってやろうと
お家の庭で、自転車青空教室開催中です。
「自転車は、こーいう風に乗るの。で、漕ぐ」
「〜♪It is interesting(面白いな)」
受講者は二名。
いわずと知れた、政宗・小十郎ペアである。
…いや、別に真田主従をのけ者にしているつもりはなく
ただ単に誘いに行ったら居なかったのだ。
あの二人とは縁が無いのかもしれない。
どうにも関わりの薄い二人の顔を思い浮かべながら、は
乗っていた自転車を停める。
きゅっと言うタイヤのこすれる音と共に、自転車が止まって
はペダルから足を外して地面につけた。
「じゃ、こういう感じで………最初は後ろで持って漕いでみる?」
「いや、特に必要ねぇよ」
さらっとなにか言われてしまった。
結構自転車に乗るのは、難しいと思うんだけど。
しかし、発言者は政宗だが、小十郎のほうも異論ない顔をしている。
こんなものは、簡単だとでも言うのか、戦国武将。
………まぁ、色々こいつら規格外だからなぁ。
色んな意味でそう思って、は自転車から降りて政宗と交代する。
彼は最初少しよろめいたが、それも僅かな間だけで
二分もしないうちに完璧に乗りこなし始めてしまった。
「………あのね」
「Ah?」
「あたしが子供の頃は、散々練習して乗ったのよ。乗ったのよ」
その状況に予想出来たとはいえ、思わずは文句を口に出す。
姉など、小学校高学年まで、補助輪なし自転車には乗れなかったというのに。
(いや、あの人の場合は運動音痴が過ぎるのだけれど。
なにせ五十メートル走十六秒台だ)
しかし政宗は小憎たらしく、口の端をあげて
「運動能力が違うんだろ」
「キー!!なんてこと言うの!言うほど悪くないよ!むしろ良いほうだよ!」
「キーなんて、Reality(現実)に発言する奴、はじめてみたぜ…」
「落ち着け、。そんなだからテメェは政宗様にいじられるんだ」
「小十郎さん、これが落ちついてられる状況?状況なの?」
「落ち着くんだろうが、そろそろ」
「くっ…………」
昨日の自分の発言を持ち出され、は唇をかんで目をそらした。
く、悔しい…。
拳を握ってぶるぶるとしながら、は華麗に自転車に乗る政宗を見つめる。
………しかし、チャリンコなんかに乗ってると
ごく普通の、ただのガラの悪い兄ちゃんに見えるな、こいつ。
「…おい、なんか失礼なこと考えただろ、あんた」
「ううん、全然」
「嘘つけ」
「やだなぁ。あたしの頭の中身なんて、政宗にはわかんないじゃん?」
「…こういうときだけ、気のきいた言い回ししやがって」
「何か言った?」
「いいや、全く」
「嘘つけ」
「…政宗様、あまり子供のようなことはなさいますな。、お前もだ」
ため息をつきながら小十郎が言うので、仕方なく政宗もも矛先を納める。
くそう、命拾いしたな。
べーっと舌を出すと、いくつだお前はと言われる。
いくつでも良い。
その後も練習で政宗は自転車を乗り回し、ふと「そういや、こいつで階段も上れるんだったな?」
と、どう考えてもマウンテンバイクでやるようなことを呟いてみた。
「…それは、ママチャリでやることじゃないよ、政宗」
「そうなのか?」
「もっとこう…いい自転車でやるもんなの」
「ふぅん」
どことなく面白くなさそうな表情で、政宗が自転車から降りる。
…ひょっとして、やりたかったのか。
テレビから仕入れた情報をやりたがるとか、お前はどこの小学生だと言ってやりたくなっただが
まぁ、見るものの殆どが、見たことないものばかりの彼らにそれをいうのも。
飲み込んで、は「さ」と、今度は小十郎を促す。
小十郎は一つ頷いて、政宗と交代して自転車にまたがった。
「………………………………………………」
「………………………………………………」
その光景に、思わずは政宗を見る。
政宗も、を見る。
多分、二人の心は一つだ。
………小十郎、自転車似合わねぇ!!
なんとも言えない絶妙な違和感のある光景に、は思いっきり顔を歪め
政宗はふきだすのを堪えて後ろを向く。
いや、時々肩が震えていて、ぶはっと音がしているので堪え切れてない。
そんな二人の様子に思うところがあったのか、小十郎が自転車から降りた。
無言で近づいてくる小十郎が怖いが、堪えつつ、は小十郎の肩を叩いて
「小十郎さん、すんごく自転車似合わない…」
「良い度胸だな、…前に出るか?」
「出ないよ。…だってママチャリ似合わないもん」
ぶはっと政宗がふきだす。
小十郎の額に青筋がたった。
たたれても。だって本当に似合わないんだし。
ミスマッチとか、そういうレベルの問題じゃなかった。
まじで似合わなかった。
似合う似合わないでいうなら、政宗の方も似合ってはいなかったが
小十郎ほどじゃない。
とりあえず、あと一週間してもこいつらが帰らなかったら
ママチャリじゃなくて、格好良い系の自転車を買ってやろうと
は自分の腹筋のために、固く決意した。
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