葬列のような、電車待ちの行列に並ぶ。
深夜の終電ともなれば、自然と並んでいる人間は
飲み会のあった気分のよさげなサラリーマンか
もしくは残業で終電まで残らされたサラリーマンかの二択だ。
そして、
義子はその後者の方であった。
夜の十時までなら、まだ心地よい疲弊と言えたかもしれないが
日付をまたぐと、さすがに頭がぼうっとする。
義子の付いている職業は経理職で、滅多と残業することなどないが
今回ばかりは特別だった。
サーバーがバックアップごと吹っ飛んで、入力した伝票データが全ておしゃかになったのだ。
しかも
義子の会社は来月が期初月であるので、監査役による監査が入るのだから
そりゃあもう大慌てだった。
不運にもほどがあるし、タイミングが良すぎる。
けれど、飛んでしまったものは仕方ないので、サーバーに大文句垂れつつ
義子以下、経理課五名は日付をまたぐ時間まで残業を重ねたのだった。
ついでに言うなら、
義子は前係長が退職したために、繰り上がりで若くして課の係長に昇進直後。
故に、役職付き待遇で最後の最後まで帰してもらえなかったのだから、もう最悪と言うしかない。
「………」
電車のライトが線路の向こうから迫りくる。
そして
義子の前に、音を立てて電車は止まった。
降りてくる客は、ここが始発駅なので居ない。
扉が開くと同時にすぐに乗り込んで、扉の横の席に腰かける。
そこで、ようやく一息ついた気持ちになった
義子は
すぐに腕を組んで寝る態勢に入った。
自分の降りる駅まで、三十分少々。
仮眠をとるには十分すぎる時間だ。
「……ねむ…」
うつむいたままあくびをかみ殺し、
義子は瞼を閉じて―
すぐに、呼吸が苦しくなる。
ごふっという音が耳に届くが、それが自分が息を吐いた音だと
気がつくには少しの時間を要した。
「ぐ…ごふっ…が…」
体が冷え、鼻が痛くなる。
何が起こったのか認識も出来ないまま、とりあえず足をばたつかせて
立ち上がってみると、
義子は川の中に居た。
ちゅんちゅんと小鳥が鳴いていて、燦々と日の光が降り注いでいる。
「………はぁ?」
いやいやいや。
先ほどまで自分は確かに電車の中に居たはずだが?
しかも、その電車は終電で、時間は深夜だった。
日の光が降り注ぐはずがない。
意味が分からない。
川の真ん中に間抜けに突っ立っている自分が信じられなくて
愕然とした気持ちで居た
義子だが、ふと、視点がいつもよりも低いことに気がつく。
………。
足元を見下ろすと、着ていたワンピースの裾が、足のつま先でふらふらと泳いでいた。
…確かに、このワンピースは長めで、
義子の足のふくらはぎまであるが、しかし。
嫌な予感がする。
義子はまず、手を見てみた。
キーボードだこのある、女にしては大きな手が見えるはずだった。
……が、しかし。
義子の前に見える手は、まるで子供のようにふっくらとした手だ。
「えぇと」
呟いてみる。
電話応対で褒められる、落ち着いた声は、なぜか、子供のようなハイトーンボイスになっていた。
………。
仕方がないので、水面を見てみる。
すると、そこにはあどけない顔をした女児が。
「………小学校の時の顔だこれ!」
義子は冷たい川に映った顔に悲鳴を上げて、頭を抱えてしゃがみこんだ。
小学校の時、十歳前後、こういう顔をしていたと、一昔前の記憶を引っ張り出して
合致させてみた
義子は、あまりの事態に頭がくらくらとするのを感じる。
一体、どういうことなのだ。
自分は確かに終電に乗って、目を閉じて。…目を閉じただけなのに、川?
しかも体が縮んで?子供に戻っている?
意味が分からないともう一度呟こうとした
義子だが、
唇が震えてそれは叶わない。
「…どういう、ことなの」
喉から振り絞って出した声は、小さくかすれていた。
当たり前だ。
日常から遠く離れた場所に来てしまったのだと、分かる。
例えばファンタジー小説で良くあるような展開が、自分の身に起こっていることも。
絶望が、ひたりと
義子の心に忍びよる。
なぜ、こんなところにいるのか。
なぜ、こんな場所に来たのか。
なぜ、自分の体は小学生時分に戻っているのか。
なぜ、自分だったのか。
考えても仕方がないようなことばかり、頭の中に思い浮かんで消える。
そして、消えるたびに
義子の心は暗く苛まれるのだ。
…これから、どうすればよいのか、と。
その
義子の思考を打ち破ったのは、小鳥の声だった。
ちゅんっと鳴いた声は辺りが静かなためか、良く響いて
義子の詮無い思考を止める。
「……………無駄なことはやめよう」
頭を振って、建設性のない思考を止めて、
義子はとりあえず川から上がろうと
歩を進めようとしたが。
「…………」
パンツがずれた。
当たり前だ。
肉体は小学生に戻ったくせに、衣服は会社勤めをしていた時のままである。
パンツのウエストが合っているはずがない。
やはり合っていない、というか必要ないブラジャーが着用されているのを
意識しながら、
義子は無言でパンツを上げなおした。
川から上がった
義子は、さて。と思考の中で前置いて考えてみる。
さて、建設的に考えよう。
仕事をするときと同じように、考えても仕方のないことは捨て置いて
考えるべきことだけ考えるように、
義子は努める。
絶望だとか、諦念だとか、悲嘆だとか、そういうのは余裕のある人間の感情だ。
寝床とご飯が確保できてから、そういうのはやろうと
あり得ないぐらいに思考を切り替えて
義子は考える。
そう、寝床。ご飯。
この二つは最重要視せねばなるまい。
人間、仕事がなくても死にやしないが、ご飯がないと死ぬし
屋根のある寝床がないと体調を崩して死ぬ。
…人里に降りられれば、そういう心配もないのだろうけど
今のこの周囲の雰囲気だと、人里が近くにあるかどうかが、まず疑問視される。
義子は、改めてぐるりと周囲を見回した。
清水の流れる川は良いとして、鬱蒼と生い茂った木々は
明らかに人の手が入っていない様子であった。
一体どれだけ歩けば、人里にたどり着けるものやら。
なんとなく、山の中であることは分かるものの
山の頂上付近なのか、中腹なのか、それとも裾の辺りなのか。
義子にはさっぱりわかりやしない。
「…まぁ、とりあえず、寝床探しをしながら人里は探ってみるとして」
幸いにして、綺麗な水の流れる川が横にあるから、水は心配しなくても良い。
あとは食料と雨風をしのげる場所だが。
しばし考えて、やはり川に近いほうが良い。
けれど、鉄砲水に巻き込まれたくはないから少しは小高い場所でと
条件をそろえて、
義子は当てもなく、川沿いを歩き始めた。
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今、自分で一番褒めたいところは、と聞かれたなら
義子は「災害に関して、強く関心があった点」と迷わず答えるだろう。
防災グッズを枕元に置くのはもちろんのこと、ガラスが割れた時用に
スニーカーもベッドの下に完備していたし、防災食も玄関脇に準備していた。
だが、いざとなったとき、人心が荒れるのは必須。
ならば、人を避け、野に生きる心得も必要かもしれないと
一足跳びに思った経験が、今、この時。
義子を助けていた。
「…いや、あの時は、我に帰った時には恥ずかしかったけど、どこで役に立つか分からんね」
岩に囲まれた寝床と決めた場所で、膝を抱えながら
義子は呟いた。
ここに来てから四日。
ひもじいにはひもじかったが、食べれる草を見分けて食べているせいで
飢えて死ぬというほどでもない。
睡眠に関しても、その辺の木の葉を集めてかぶって寝ているおかげで
寒くて震える、ということもなく。
「それを考えると、今が夏の終わりで良かったかな…」
僅かな良かった探しなど、むなしいにもほどがあるが
今言ったことは真実だった。
これがもしも冬の最中であったなら。
過ごした同じだけの時間で、
義子は確実に凍死していたはずだ。
あーやだやだ。なんでこんなことになったかなぁ。
小腹が減ったので、摘んできていた草を生でむしゃむしゃしながら
義子は自分の不運を嘆く。
とりあえず、寝床と食料は有るし、それをする余裕ができたと思ったからだ。
そして不運を嘆くと決めたなら、怒涛のように頭を考えが流れる。
まず最初にどうして自分なのか。
残業して、日付変更線まで越えて頑張った自分に対して
何たる仕打ちなのかと思う。
意味が分からない。
なんで自分なのだ。
子供になって、知らない場所に飛ばされるなんてそんなのは
夢見るお年頃の十代の人間でやっていただきたい。是非。
特別になりたいとか、自分は特別なはずだとか。
そういう思い上がりと言うよりは、自分に対する夢を持てている人間にこそ
こういう非現実は起こるべきなのだ。
平凡とか、平穏とか、そういう言葉を、
義子は愛しているのに。
大体、
義子とて現実主義者の端くれとして、現実を認めないわけではないが
この状況は無かろうよ。
明らかに非現実に置かれながら、状況は、野宿。サバイバル。草とか食べてる。
しかも草まずい。
うああああああと、なる。
普通、こういう吹っ飛ばされたような感じの出来事が起こった場合
迎えが来たりとか親切な人が拾ってくれたりとかするものではないのか。
ないのか。
物語じゃあるまいし、ないか。
自分で考えて、自分で否定する一人上手も、随分と上達した。
柔らかい緑を食べきって、土のついた根を、
義子は放り投げる。
物語じゃあるまいし、現実だから、サバイバルは仕方ない。
草を食べるのも生きるため。
星の見える寝床で寝るのも、家がないから仕方がない。
おまけに、これがいつか親切な人に見つけられて、何がしか楽できる展開に!
だとかいう淡い期待、というか願望は
三日目に歩いていて見つけた人里の様子に、既に打ち壊されている。
………ファンタジーが良かったと、
義子は思う。
真実、中世ヨーロッパと言うのは、死んでもごめんこうむるが
こう、似非ヨーロッパ的なファンタジックな世界が、非現実であるならば、良かった。
だというのに、
義子の見つけた人里ときたら
茅葺屋根と、畑と田んぼしかない、明らかに武士の時代の集落のようなもので
それを発見した時の
義子の絶望ったら無かった。
中世ヨーロッパも嫌だが、中世日本も嫌だ。
というか、中世が、
義子は嫌なのだ。
「どうせ訳の分からない非現実になるなら、仮想戦記の世界ぐらいで良いのに…」
零す
義子の心は切実だった。
仮想戦記の世界なら、古くて第一次世界大戦下。
けれど、中世日本ということは、現代とは比べられないほどに
文明が発達していないということ。
文明が発達していないということは、どういうことか。
人心が乱れていることが多い上
人買い、口減らし、いわれのない迫害、偏見、あと夜盗だとかそういう。
現代で馴染みのない危険なあれこれが、ここには存在するということだ。
山の中で暮らしていても、特に夜盗辺りはかち合うことがあるかもしれない。
おまけに。
義子は自分が着ている、汚れたワンピースを見る。
背が合わぬせいで、もはや貫頭衣のようになっているそれを着て、あの集落に向かった場合
いや、向かわなくても、誰かに見つかった場合どうなるか。
考えて、ごくりと喉が鳴った。
親切に迎えられるとは
義子は思わない。
荒んだ時代の人間は、異物が現れるのを快く思いはしないだろう。
見たこともない人間が現れて、見たこともない服を着ていて
無事で居られる保証がどこにある。
だから、
義子は人里を見つけた時に絶望した。
この服のまま見つかったら、最悪殺されることが確定したからだ。
救われるなどとは思わない。
楽観は、死に到る最短の道だ。
死にたくない、と
義子とは思う。
だから、こんな訳の分からない事態になっているのに
絶望するだけで、自殺は考えていない。
死にたくない。
だから、死なない。
草を食べるには、
義子にとってはそれで十分で
体力があるうちに、人里に下りて干してある着物をぱくるか
集落は川上にあるから、洗濯の時に誰かが誤って流してくれるのを願おうと
義子は草を食みながら、そう思った。
そうして、彼女は我が身を嘆いたが、一度も両親友人のことは思い出しもしなかった。
…否、意図的に思い出さなかったのだ。
思い出してしまえば、自分が折れてしまうと分かっていたから。
暖かな場所は懐かしくなるでしょう寂しくなるでしょう悲しくなるでしょう。
だから、思い出さない。
何処までも彼女は、そういう現実主義者で建設的で哀れな人間だった。
生きるだけなら、それで良いけれども、ある意味人間らしくもなく動物的な、そういう。
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一月と半分が過ぎた時、着物が流れてきた。
男物の着物だったが構いはしない。
歯で裾をちぎり、あとは繊維に沿って手で割いて身丈に合わせた。
来たころに比べて体がだいぶやせ細っていることに気がついたが
仕方がないことだと諦めた。
二月が過ぎた時、秋が訪れたせいか木の実が山中に実り
義子はそれを乾燥させて、保存食を作った。
困ったのは、発見した集落の人間たちが
木の実を取りに山に入ってくることだった。
見つからないように身を潜めているのは難しかったが
義子は常にやり過ごした。
でなければ、殺されていただろうと思う。
ここは、国と国の狭間であるらしく、もうすぐ戦争が起こると
大分荒だった様子で山に入った者たちは零していたから。
食べ物が全然足りないとも。
そこに見も知らない子供が現れて、おまけに自分たちが採るはずだった木の実を
奪っていたと知ったら。
考えるのは容易く、
義子は来た時に集落に下りなかった自分の選択を褒めた。
三月が過ぎ。
冬が訪れようとしていた。
今は秋の終わりでまだ良いが、本格的な冬が訪れれば、やがて凍えて死ぬだろう。
殺されるのとどちらがましかと思ったが、
義子は死にたくないので、どちらも却下したかった。
そして、三月半。
秋が終わり、冬が訪れる。
義子の転機も同時に。
さて、
義子の暮らしていた日本で、歴史の時間に、戦国時代のページに入ると教えられる人物が幾名かいる。
そのうち、時代を代表する人物たちだと、詳しく覚えさせられる人間が三人いるが
最も最初に教えられる男の名は、織田信長。
その織田信長が天下を取るために行った最初の戦いであると
教科書に書かれる戦は、桶狭間の戦いと呼ばれている。
その戦いは五月に行われ、織田信長は、当時有力な戦国大名であった今川義元を少数で破り、その力を天下に示した。
義子は知らぬことだが、今現在、
義子がいるこの世は、まさに戦国時代。
自らが日の本の覇者とならんと、野望を持って戦国大名たちが立ち上がる
その時代の先駆けとして行われた桶狭間の戦いが、先ほど織田軍の勝利を持って終結したところだった。
…しかし、今は冬である。
義子の『世界』の桶狭間は、五月に行われ、けれど、この『世界』の桶狭間は
冬の始まりに行われた。
また、差異は、それだけに留まらず。
それが
義子にとっての転機をもたらす。
「………何?」
山の中が騒がしく、
義子は寝床から身を起した。
冬が来て、気温が下がる一方だというのに
屋根のない場所で寝ているせいか、近頃眠りが浅い。
それゆえに、目が覚めたばかりでも、頭はしゃっきりとしていた。
すぐさま立ち上がって、周囲を見回す。
すると、いつもは星明りしかないはずの山中に
人間の起こした炎の赤が見えた。
…松明だ。
上下に揺れているその赤に、どくりと心臓が鳴る。
自分の存在がばれて、山の食料を食べ荒していた不届きものを狩りに?
いいや。
それにしては空気が物々しすぎる。
もっと、自分よりも、厄介なものを探しているような。
息をひそめて状況を把握しようとすると、近づいてきた村の人間の声が聞こえだす。
「…落ち……が…山の………」
「見つ…れば…報酬が、織田から…」
「首を………、侍でも……でかかれば」
声をひそめもせずに喋る村人のおかげで、切れ切れながらも、大体状況は把握できた。
侍が、山に入ったらしい。
それで、その侍を見つければ織田…?織田から報酬が出るから、大勢で入ってきたと。
左右に散開した村人達に見つからないよう、音を立てずに寝床から離れつつ、
義子は考える。
とりあえず、一番最善は、誰にも見つからないこと。
村人は勿論、侍と言うのは落ち武者だろうから、見つかればこちらもどうなることやら。
まぁ、気も立っているだろうし、村人が追いまわしている最中のことだ。
まず殺されるだろうと思って、茂みをしゃがみこんで通り抜けようとすると
目の前に、突然白塗りの福笑いの顔が現れる。
お化けかと一瞬思ったが、しかし福笑いは人間のようで
背の高い男が、四つん這いで
義子と同じように
茂みを抜けようとしている所に丁度かち合ったらしかった。
人に見つかった衝撃に動けない
義子よりも先に、福笑いがかちあった衝撃から立ち直る。
「良く声をあげなかった、の」
麻呂はびっくりして叫びそうになったの。の。という福笑いは
その実ちっとも驚いた顔はしていない。
一方で、
義子が悲鳴を上げなかったのは、驚きすぎて声が出なかっただけだ。
ようするに、上げなかったのでなくて、上げられなかった。
ぱくり、と言葉を発せないまま口を開けて、福笑いを指さすと、の。と福笑いは小さく笑う。
「そちは麻呂を追ってきた村人かの?」
「いや、ううん。違う」
その言葉を聞いて、
義子は、慌てて声を絞り出し、首を振って否定する。
否定しなければならない。
原因は、福笑いが腰に差した刀にある。
帯刀しているということは、全く見えはしないが、これは侍ということだ。
そして、山に居る侍とくれば、即ち、これが、落ち武者。
見つかってはいけない片方に見つかった動揺から、こくりと唾を飲み込むと
福笑いが微かに動く。
まずいと、瞬間的に思ったのはただの勘だった。
殺されると思ったのも。
そしてそれを思うと同時に
「案内しようか」
言葉が、勝手に口をついて出ていた。
ただ死にたくない一心で。
しかし、その言葉に福笑いの動きが止まったから、
義子は続きを喋りたくる。
「山を抜ける案内をしようか、お侍。無事に抜けられたら
ご飯と寝床を用意してくれるってんなら、案内しても良いよ」
「……の。の。もう一度聞くが、そちはあの村の村人ではないのかの。
いきなり追い掛けられて、麻呂はかなり立腹してるの」
「全然。むしろ多分、見つかったら殺されると思う」
本当の話なので、感情をこめて言うと、それは物騒だの。と
やたら呑気に福笑いは返した。
その返しに、ひとまずの危機が去ったことを知り
義子は福笑いの横を抜けると、こっち。と彼の袖を引いて
村人の向かっていない方角へと走り出す。
その
義子の先導に福笑いは大人しく付いてきて、
義子は長い一夜になりそうだと
赤々とした火の灯る山を抜け始めながら、容貌に全く似合っていないことを思った。
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