お互いの肌を温めるようにベッドの中で寄り添い抱きしめ合う。

軽いキスと深いキスを交互にされて、私はこの上なく幸せな気持ちに包まれていた。

そして、ふとクリスマスと言うイベントには欠かせないある物をまだ修吾君に渡していない事に気付き、少しだけ体を起こして彼を覗き見る。



「あのね…プレゼントがあるの…」

「ん?プレゼントって…美菜にはクリスマスケーキを作ってもらったから、それでいいよって言ったのに…用意してくれたの?」

「うん。やっぱりプレゼントしてあげたくて。そんな大したものじゃないんだけど…去年はセーターだったでしょ?あれで大分コツが掴めたから、今年はカウチンセーターとね、手袋とを編んだの…あの…去年とあまり代わり映えがしないんだけど…ごめんね?」

掛け布団を胸の辺りで押さえながら、ベッドから半身を乗り出して用意したプレゼントをカバンから取り出し、修吾君に差し出す。



「どうして謝るの?すっごく嬉しいよ…今年は手袋まで?また寝不足にならなかった?」

修吾君は体を起こすと、嬉しそうに微笑みながら包みを受け取って、開けていい?と聞いてくる。

「うん…気に入るかどうかわからないけど。今年はね、随分前から編み始めたから、寝不足にはならなかったよ?」

「うわっ。すごい…これ、美菜が作ったの?美菜って手先は器用だよね…すごく気に入ったよ。ありがとう」



手先は…

少しその部分が引っかかる気もしないでもないですが…。

ある意味反論できないだけに、軽く流しておく事にする。



「ううん。気に入ってもらえてよかった」

「うん、すっごく。暖かいし、肌触りもいいし…何よりも美菜の愛情たっぷり入ってるもんね?」

「えへへっ。うん、い〜っぱい入れたよ?」

「うん。知ってるよ?」

修吾君はこの上なく優しい笑みを浮かべると、チュッと軽くキスをくれる。

そして、少しいたずらっ子のような可愛らしい笑みに変えると、

「あ、俺も今年はプレゼントがあるんだ」

そう言ってまた一つキスをくれる。

「え?…でもでも、修吾君には料理と部屋を貸してもらうからって、プレゼントはナシでいいって言ってたのに」

「クスクス。俺も美菜と同じ事を考えてたみたい…去年はプレゼントを何も用意してあげられなかったからね?今年はちゃんと用意した」

「そ、そんなぁ。よかったのに…」

「いいの、いいの。俺がそうしたかったんだから…ねぇ、美菜。ちょっと目を瞑って?」

「え…目を?」

私は首を傾げながら、胸元を掛け布団で隠したまま言われた通りに目を瞑る。

目を瞑った事を確認すると、修吾君は何やらゴソゴソと隣りで動き始めた。




な…なんだろう?目を瞑ってって…

すごく、ドキドキするんですけど……




目を瞑っていて状況が分からないだけに、何故か妙なドキドキ感が私を襲う。

暫くして修吾君の動きが治まり、私の隣りに落ち着くと小さめの声が耳に届く。

「気に入ってもらえるかどうか分からないけど…」

そう言って私の右手を取ると、同時にヒヤッとした冷たい物が薬指を通って行く。

「……へ?」



な…なに?



ゆっくりと目を開けて、一番に目に飛び込んで来たモノ…

自分の薬指に納まる可愛らしくデザインされた銀色のソレ。

真ん中にはブルーの小さな石が埋め込まれている。

「指…輪?」

「うん…ペアリング。ちょっと柄じゃないけど、俺も美菜と同じデザインのモノをね、買ったんだ」

そう言って修吾君は少し照れくさそうに鼻の頭を指でかきながら、そっと自分の右手を差し出してくる。

女の子らしい私の指輪とは少し違って、メンズっぽい幅広の石がついていない指輪。

それと、私の指にはまっている指輪を眺めて、満面の笑みがこぼれる。



何よりも、自分とお揃いの指輪が彼の指にも納まっている事がとてつもなく嬉しかったりする。

修吾君…こういうのしそうにない人だから…。



「い…いいの?指輪なんて…こんな、高価なもの…」

「いいよ。それにこれ、WG(ホワイトゴールド)だし、そんなに高価なものじゃないから安心して?それとね、美菜の指輪には俺の誕生石のサファイア、俺の指輪の裏には美菜の誕生石のアクアマリンが入ってるんだよ?」

そう言いながら、修吾君は一旦指輪を外すと、ほら。と裏側を見せてくれる。

修吾君が言うように、彼の指輪の裏側には小さな薄い水色をした綺麗な石がちょこんと埋め込まれているのが目に映る。



私の指輪には9月が誕生日の彼の誕生石であるサファイアが。

修吾君の指輪には3月が誕生日の私の誕生石であるアクアマリンが。

ずっと一緒にいるよ。と、言われているようで、心の底から温かなものが溢れ出してくる。



「ほら、もう3学期は殆ど学校に行かなくてもいいでしょう?だから、気兼ねなくできるかなって思って…気に入って…くれた?」

「うん…うんうん!!すっごく…すっごくすっごく気に入りました!!ありがとう…修吾君。すごく…嬉しい…よぉ…」

じっと2つの指輪を見つめながら、自然と私の瞳から涙が溢れ出す。

修吾君はそんな私をギュッと抱き寄せて優しく髪を撫でると、クスクス。と小さく耳元で笑う。

「そんな、泣かないでよ。美菜?」

「だぁって…すごい…嬉しいんだもん…泣いちゃうよぉ」

「あははっ!そう?気に入ってもらえてよかった。自分でも指輪をはめる事があるだなんて思ってもいなかったから…ちょっと照れくさかったんだけどね?美菜に喜んでもらえて本当に嬉しいよ」

「うん…うん…嬉しい」

私は修吾君の背中に腕をまわして、ギュッと抱きつき後から後から溢れ出してくる涙を止められないでいた。

「いつか美菜の左手の薬指に指輪がはめられるように、頑張って一人前の男になるから…それまではステディリングで許してね?」



そんなっ…許してだなんて。

これだけでも私には勿体無いくらいなのに…。



私は涙を流すだけで、言葉を発する事が出来ずに、ただただ修吾君の腕の中で何度も何度も頷く事しか出来なかった。



いつか、左手に生涯を連れ添うと誓いの指輪がはまるまで…

私も一生懸命頑張って、修吾君に見合う女になりたいと思った。

ずっと…ずっと、修吾君の隣りで笑っていたいから――――



「さあ、美菜?服を着て…クリスマスパーティーの続きを楽しもうか?美菜の作ってくれたスペシャルクリスマスケーキも食べなきゃだしね?」

「うん…うん」

「涙はもう止まった?」

「…止まっ……た?」

まだ涙で視界が歪む中、彼をそっと見上げると、クス。と小さく笑われて、唇でその雫を掬い取られる。




「美菜…愛してるよ」

「私も…愛してます」

「ずっと美菜の傍にいるから…美菜もずっと傍にいてね?」

「うん…ずっとずっと傍にいる」



「メリークリスマス、美菜」

「クスクス。メリークリスマス…修吾君」



私たちはニッコリと微笑み合い、どちらからともなく唇を寄せた。



*・'゚☆。.:*:・'☆Happy X’mas Syuーgo&Mina'・:*:.。.:*:・'゚:*:・'゚☆


←Back   Home