ほんのり恋の味
昼休み、私は昨日と同じように屋上で篤の隣りに腰を下ろしパンを頬張る。
私は待ち合わせの場所へ少し早く辿り着くと、何度もショーウィンドウに移った自分を確認する。 デートって初めてだから、どういう恰好したらいいのか分からないのよねぇ。 とりあえず、美佳子の助言通り女の子らしくキャミソールにカーディガンを羽織って、少し短めのスカートをはいて来たんだけど…こんなんでいいのか?これでOKなのかい?? 一応これでも1時間くらい悩んで決めた服なんだけど。 一人ブツブツと言いながらガラスに映し出された自分を見ていると、ポン。と肩を叩かれる。 「悪ぃ。待たせた?」 「あ。篤…」 視界に入り込む篤の姿。 途端に自分の心臓が高鳴り出す。 だからもー。何だって言うのよ、このドキドキはぁ!! だけど、制服じゃなくて洗いざらしのジーンズにTシャツとシャツをラフに着こなしている篤の姿に暫し見とれている自分がいた。 …何か、いつもと印象が違う。 「何?なんか俺、ついてる?」 「あ?ううん、別に。私服なんだーって思って」 「休日デートにワザワザ制服着てくるやついないと思うけど?」 クスクス。と笑いもってそう言われ、そりゃそうですねー。と自分の口からイヤミが漏れる。 篤は少し体を引いて、改めて私の姿を上から下まで視線を流す。 そして、満足そうに頷いた。 何よ……何か変ですか? 「加奈子は私服でもすげぇ可愛いのな。いつもおろしてる髪をアップしてんのも超似合ってるし…なんつーか、やっぱすげぇ可愛い!!」 そうニッコリと笑ってみせる篤の顔がすごく眩しくて、どんどん頬が赤く染まるのが分かる。 「なっ、なによぉー。からかわないでよ!!」 「なんで怒るんだよ。…あれ?もしかして、照れちゃった?」 「ててて照れてなんかない!!」 「うわー。すんげぇ可愛い、今の加奈子。ね、抱きしめていい?」 「はっ?!何言ってんの?…って、わぁっ!!」 篤は私のたじろぎも気にせず、人目も憚らず私の体を抱きしめてきた。 ふわっと鼻を擽る篤の香りと体に伝わる柔らかさと温もり。 ――――きゅんっ。 一瞬胸の奥がそうなったような気がした。 だけどそれはほんの一瞬で、後は頭の中が真っ白になってよく覚えてない。 どうなるんだ、私…この先、どうなっちゃうの?! |