−7−

「だぁぁ、もう疲れたっ!!」

俺は大きなため息と共に自分の部屋のベッドに身を投げる。

一緒に俺の部屋に入って来た真由が小さく笑いながら、ベッドの端っこに腰を下ろす。

「結構振り回されちゃったね、あの兄妹に。」

「まったく。俺らを巻き込むんじゃねぇ、っつうのなぁ?」

「クスクス。そうだねぇ。でも、智也?さっき嬉しかったよ?」

「え、何が?」

俺、何かしたっけ?と首を傾げながら真由を見上げると、彼女ははにかみながら俺の頬に手を当ててくる。

「ほら、さっき『俺と真由の関係がバレたならバレたで、俺が全力を持って真由の事護ってやるよ。』って、そう言ってくれたから。」

「あぁ、あれね。それぐらいの覚悟は出来てるよ。なんてったって、戸籍上の姉貴に惚れちまったんだし?」

「智也。」

「だから、安心しろ。俺は真由を裏切ったりなんかしないから。ずっと傍でお前を護ってやる。」

頬に添えられた手に自分の手を重ねながら、俺は真由に優しく微笑む。

「ん、ありがとう。智也。」

「あー。しっかし、2日間とは言えあの兄妹には参った。怒りすぎて血圧が上がった気がする。」

「クスクス。智也ったら・・・って、あ!!」

真由はおかしそうに笑いながら、突然何かを思い出したように声を漏らす。

「どした?」

「智也・・・メイさんにキスされた。」

・・・・・忘れてた悪夢。思い出させんな。

真由以外に触れてしまったこの唇。思い出しただけで鳥肌が立ってくる。

「・・・・・思い出させんなよ。あぁ!キモッ!!」

「じゃぁ・・・消毒してあげる。」

「え?」

真由は少し頬を赤く染めながら、小さくそう呟くとゆっくりと俺に近づいてくる。

真由から行動を起こすなんて事、そうそうないだけに頬を寄せてくる彼女に心臓が少し高鳴る。

・・・真由。

真由は両手で俺の頬を優しく包み、柔らかい唇を俺の唇に重ねてくる。

その柔らかさを感じていると、ゆっくりと真由の舌先が俺の上唇と下唇を這う。

「・・・真由。」

「・・・・・消毒完了。」

そう恥ずかしそうに伏せ目がちになりながら、甘い吐息と共に真由が呟く。

「真由からそんな事してくるなんて、珍しいじゃん。」

そう俺が真由の頬を親指の平で撫でながらそう呟くと、ヤキモチかも。そう小さく彼女が呟く。

「ヤキモチ?」

「・・・ん。私の智也に、って。私だけの智也なのに・・・私しか智也にキスしちゃダメなのに。ってそんな事思っちゃって。」

独占欲強いね、私。って、少し申し訳なさそうに呟く真由。

「・・・もっとしろよ。」

「え?」

「もっと俺を独占しろよ。俺は真由の為にいるんだから。俺はもっと真由を独占する。」

「智也。」

「だから、もっとして。真由からのキス。もっともっと俺を真由に溺れさせて・・抜け出せないくらい。」

俺がそう熱い眼差しを真由に向けると、真由もじっと俺と視線を絡め合わせてから、再び俺の唇に自分の唇を重ねてくる。

貪るようにお互いを求めるような激しいキス。

俺は真由の後頭部に片手をまわしながら、いつも以上に俺を求めてくる彼女に自分の中が熱く火照ってくるのが分かる。



『――俺ってこんなにもメイの事が好きなんだなぁ。って思い知らされて・・・すごく夜が燃えるんだよね。』



先程、剛が言っていた言葉が不意に脳裏を過る。


まぁ、確かに。いい刺激になってっかもしれねぇな。

俺はこんなにも真由の事が好きだから、今日みたいに他の男といる所を見せ付けられると、いつも以上に真由を求めたくなる。

・・・真由は俺だけのモノなんだって。

真由だって俺の事を――――。


『恋人ごっこ』をあのまま続けてもよかったかも?

口内深くで舌を絡ませながら、いつもなら俺が言わないとしてくれないくせに、今日は何も言わなくても自分から俺のズボンのベルトを外し始める真由にそんな事を思う。


――――今日はいつも以上に激しくなりそうだな。


そう思うと、自然と自分の口の端が上がってしまった。


++ 『恋人ごっこ』 FIN ++


2005/4/15








←back  index