*Obedient You




  1  




俺にはすっげぇ大事にしてる彼女がいる。

何度も告ってその度に断られ、それでも告り続けてやっと手に入れた俺の大切な宝物。

絶対何があっても手放したくねぇ、コイツだけは――――。


「――――・・なぁ、恵子。俺の事好きか?」

「なっ!?何を突然言っちゃってくれちゃってるのよっ!何でそんな事言わなきゃいけないのよ。」

恵子の部屋でベッドを背にもたれながら床に座り、後ろから彼女の華奢な体を抱きしめてそんな質問を投げかけると、真っ赤な顔をしてたじろぐ恵子の姿。

ったく、素直じゃねぇんだから。

ま、こういう所が恵子の可愛い所でもあり、俺の好きな部分でもあったりする訳だけど?

でもたまには聞きてぇじゃん、コイツの口から俺が好きだってさ。

それに、こういう恵子も可愛いからもうちょい苛めちゃおっかな。

「いいじゃん、なぁ恵子ぉ。俺の事好きぃ?」

「わっ分かってるクセにそんな事聞かないでよ。」

「え〜・・俺、恵子の口から聞きてぇ。なぁ、どうよ?」

「どうよ?じゃない。もぉ、知らない。私お茶取ってくる。」

そう言って更に顔を赤く染めて立ち上がろうとするもんだから、思わず笑いがこみ上げてくる。

俺は恵子の体を後ろから抱きしめると、耳元で囁く。

「ダメ。行かせねぇ。俺はすっげぇ恵子の事好きだぞ?お前はそうじゃねぇの?」

「私も直人と同じ気持ちに決まってるでしょ?もぉ!笑わないでよ・・・バカ。」

「だって、真っ赤になっちゃってる恵子ちゃんがすっげぇ可愛いんだもんよ。もぉ、すんげぇ好き。恵子、好き好き〜。」

「きゃはははっ。やっ・・ん。もぅ、直人くすぐったいってば。」

恵子の茶色くて軽くパーマの掛かった髪をかき上げ、耳に息を吹きかけるように囁きながら耳朶をペロっと舐める。

コイツの弱い場所の一つ。俺はその弱い耳を攻めながらまわした手を恵子の胸元に移動させる。

「恵子ってばそんな色っぽい声出しちゃって。俺、止まんねぇぞ?どうしよっか。」

「やだもぅ。直人のエッチ!!どこ触ってんのよ。」

「今更なんだよ。今に始まった事じゃねぇだろ?恵子を前にすると、俺ダメなんだよねぇ。すぐキスしたくなっし、抱きしめたくなるし。エッチしたくなっちゃうぅ。」

その言葉に真っ赤な顔で、バカッ!!って言ってくる恵子の顎に手を当てて自分の方に向かせると、その唇を塞ぐ。

舌で唇を割り、奥深くを掻き回すと自然とそれに応えてくる恵子の舌。

何度も角度を変えて深くキスを繰り返し、恵子の口内を味わう。

「んっ・・・。」

恵子の口から甘い吐息が漏れ始め、俺の脳を刺激し始める。


――――バカって言われても仕方ねぇ。そんだけ恵子に夢中なんだから。

お前を手に入れる為にどんだけ頑張ったと思ってるんだよ。

やっと、やっと手に入れたんだ。バカにもなるっつうの。

なぁ、恵子。俺がどんだけお前の事好きでいるか、分かってっか?

「恵子・・・俺から離れんなよ?」

「ん・・・なによ突然。離れる訳ないでしょ?」

唇を離してそう呟くと、恵子が何を言ってるの?って表情で俺を見てくる。

その表情に俺の口から笑みが漏れた。

『安心』という笑みが。

「クスクス。分かってっけど言っとかねぇと。なんせ、俺のお姫様はモテるからなぁ。いつ悪い虫が付くかわかんねぇし?毎日心配で仕方ねぇんだって。」

「それを言うなら直人だってそうでしょ?どれだけあなたを狙ってる子がいると思ってるのよ。最近は少なくなったけど、直人と付き合い出した頃なんてすっごく非難浴びたんだから。私の方がその子達に取られやしないか毎日心配だわよ。」

「恵子が心配する必要はねぇんだって。だって俺、恵子以外考えらんねぇもん。付き合い始めた頃・・・そうだよな、結構あったなぁ。」

「ほんと、大変だったんだから。直人があんな場所であんな事するから余計だったんだよ?でも、ずっと直人が護ってくれてたから大丈夫だったけどね。」

「クスクス。あんな事ね・・・俺、あん時必死だったもん。お前を手に入れようとさ。今考えると、結構恥ずかしかったか。」

「結構じゃなくて、無茶苦茶恥ずかしかったわよ。お陰で全校生徒公認の仲なんて言われちゃうし・・・女の子にはヤッカミを言われるし。もぅ散々。」

「ごめんな、恵子。だけど、そのお陰で俺は恵子と付き合う事が出来たんだし、それはそれで後悔はしてねぇよ?お前には迷惑だったかもしんねぇけど。」

「迷惑・・・じゃないよ。直人の気持ちちゃんと伝わってきたし・・・嬉しかったから。」

そう恥ずかしそうにはにかみ、俺を見上げてくる恵子。

それだけで幸せになってくる。

あの時、マジで必死だった・・・恵子を振り向かせる為に。

頑張ったよな、あの時の俺。

――――1年前の、恵子に一目惚れをした時の俺。

top next→