*大嫌い!!




**−願い事(クリスマスVer.)ー **



12月24日は世間で言えばクリスマスイブ。

私も毎年クリスマスはそれなりに彼氏がいる時は彼氏と、いない時は友人とプチパーティーなどを開いて楽しんでいた。

そう、それなりに幸せな気持ちになって。

だけどどうもこの奥田隆志という男とは、すんなりと事が運ばないようで……。



私たちって相性悪いのかしら?



なんて、若干の疑問符が頭に浮かぶ。




「おい、中里!お前何べん間違えれば気が済むんだよ!!」

12月24日の今日。

なるべくは何事もなく穏便に仕事を終えたかったのに、朝礼後そんな声と共に外 に検品に行っていた隆志が事務所に戻ってくる。


「はぁ?なによ…そんな大きな声出して」

「お前、またサッシの色を間違ってんじゃねーか…しかも俺の現場のヤツ」

「嘘…だって、あんたが書いたメモ帳通りにB6で注文したんだから間違ってな いハズよ」

「はぁ?俺が書いたのはB6じゃなくてB5!ブラックだよ、ブラック!!」

「ブラックぅ?嘘よ…だってメモ帳にはちゃんとB6って……」


急いで自分の机に戻り、引き出しからヤツの書いた注文書が閉じられている冊子 を取り出す。

そこには汚くミミズが這ったような文字で、サッシの番号と色記号が走り書きさ れていて…

私はその色記号のところを指差し、ヤツに、ほら。と、それを突き出す。


「見て見なさいよ。B6って書いてあるじゃない」

「だから、B5って書いてあんじゃねーか」

「はぁ?これのどこがB5?どう見たってB6にしか…」


いや…しっかりと見れば「5」に見えなくもない。

私はメモ帳を改めてしっかりと見直し、ため息を漏らす。



………字が汚すぎる。



「ほれ、見てみろよ。ちゃんとB5って書いてあんじゃねーか」

「見ようによっちゃ見えるけど…こんなきっちゃない字で書いたヤツを渡すあん たが悪い!もっと綺麗に清書してから持ってきなさいよね!!」

「仕方ねーだろ!今日入荷する為には時間ギリギリだったんだから…お前こそコ ンピューターに入力する前に確認しろっつうんだよ!!」

「はぁぁ??確認しろだぁ?バタバタと事務所に帰って来たかと思えばタイムリミット3分前に『これ、 注文しとけ!明日入荷しなかったらタダじゃおかねーからな!!』って言ってさ っさと自分は出てった癖に?どう確認しろっつうのよ」

「携帯でも何でも連絡取りようがあんだろうが」

「だったらあんたがメモ帳渡す時に、それB6に見えるけどB5だからな?って 言えばよかったんでしょうが!!」

「だぁ!もういいよ!!こんな所でお前と言い争ってても時間の無駄だから…っ たく。年末のクソ忙しい時にミスりやがって…今日は土曜だからメーカーも休み でサッシの取り直しが月曜まで出来ねーし。クソっ…それでなくてもおしてる現 場だっつうのによ。こんな事なら自分で注文するんだったよ」


その隆志の言葉にプチンと私の中の何かが切れる。

クソ忙しい時にミスりやがって?こんな事なら自分ですりゃよかっただぁ??

それじゃ、まるで私一人がミスったような言い草じゃない。

確認しなかった私も悪いけど、こんなミミズが這ったような見難いモノを出して きたヤツにも責任があると言えばあるでしょう?

いつもは綺麗に清書したモノを渡してくるんだから。

私はキッと隆志を睨みつけると、持っていたメモ帳をバン!とヤツの胸に叩きつ ける。


「えぇ、そうしてください!二度と奥田の注文は受付ませんから…それと。暫く 話しかけてこないでよね!すっげームカついてるから、私」

「なっ?!ちょっ…それとこれとは話がちげーだろ!優里!!」

「会社で気安く人の名前呼ぶんじゃねぇ!!!」

「待てって!…ゆ…中里!!」


背後から追いかけてくる隆志の声を無視すると、私は無言のまま席に戻る。




隆志と付き合って初めて迎えるクリスマス。

私なりにちょっとした計画を立てていたのよ?

年末の忙しい時期だから、クリスマスでも何でも関係なく働かなくちゃならない のが社会人の務め。

事務員である私たちは定時に帰る事が出来るけど、営業にいたってはそうは言って いられない。

毎年クリスマスには、『うちの営業の彼女ってかわいそうだよねぇ?土・日すら関係なく呼び出されるんだから…まともにク リスマスなんて過ごせないんじゃない?』なんて哀れみながら、それぞれの相手の元へと帰っていた。

私も去年までは言う側だったけれど、今年は言われる側。

散々見てきた事だから、クリスマスイブをゆっくり隆志と過ごせるなんて思っちゃいない。

だけど僅かな時間でもいいから、一緒にいたいって思ってたから、プレゼントも用意したし、それを持って隆志のマンシ ョンで軽い夕飯を作って待っていようと思っていた。

そう…さっきまで。

だけど、一度曲がったおへそは中々元に戻らないのが私の悪い所。

私は一日の仕事を終えて、隆志のマンションとは正反対の方角にある、自分の住 むマンションへと足を向ける。

仕事中、何度か隆志が話しかけてきてたけど完全無視。

隆志は悲しそうな表情で苦笑を漏らし、最後は話しかけてこなくなった。

まぁ…いつもこんな調子で喧嘩して、週明けの月曜には私の機嫌が直ってるから、 隆志も今日は諦めたってところだろうけど。


あ〜ぁ。彼氏がいるのに一人でクリスマスを迎えるだなんて初めてだわ。


クリスマスのイルミネーションで鮮やかに彩られている町並みの中を、そんな事 を思いながら一人トボトボと歩いて帰る。




私は家に帰るとラフな格好に着替えてソファに寝転ぶと、ブラウン管に映るクリスマス特別番組を意味も無くコロコロとチャンネルを変えて眺めていた。

そうして無駄な時間を過ごし、テーブルの上に置かれている缶ビールも飲み干してしまって、クリスマスまでのカウントダウンを聞きながら、新しいビールを取りに立ち上がった時だった。



ピンポ〜ン



と、軽快なチャイムが鳴り響き、突然の事でビクッと自分の体が震える。


「誰よ…こんな時間に」

なんて言葉に出しつつ、こんな時間に来る非常識ヤロウは一人しかいない事に気付き、私はそれを無視して冷蔵庫に向かう。



ピンポーン、ピンポーン


今度は2回。

私はビール片手に大きなため息を漏らすと、ドアフォンを握る。


「………近所迷惑なんですけど」

『やっぱここにいやがったか…俺だって分かってんだろ?早く開けろよ』

「自分で鍵持ってんだから開けて入ってくりゃいいでしょう?」

『両手塞がってんだって…さみーから早く開けて』

「イヤ」

『なっ!?ちょ、マジ頼むから。いつまでもガキみたいにヘソ曲げてんなって』

「ガキで悪ぅございましたね!誰が開けるか、バカ!!」

『もー、優里…愛してるから開けて?開けねーと、ここでお前の名前大声で叫ぶからな?』

「はぁ?ちょっ…変な事しないでよ!分かったわよ…開ければいいんでしょ?開ければ…」


半分ムカムカしつつも、『愛してるから』という言葉に微妙に反応してる私。

片手にビールを持ったまま玄関のドアを開けると、両手いっぱいに何やら荷物を持った隆志が入ってきた。


「うわっ…な、何?」

「ん?今日はクリスマスだろ?つー事は、チキンじゃん。営業にまわってる時に買ったファーストフードのヤツだから、もう冷め切っちまってるけど、温めりゃ食えるし。それとほれ、お前の好きなシフォンケーキ…あーんど、シャンパン。どうせお前の事だからムカついててなんも用意してねーんだろ?」

「……………うっ」


そう言われながら手渡された冷えたシャンパンボトル。

何も言い返せずに私は押し黙る。


「ったく。クリスマスイブだから喧嘩しても健気に俺のマンションで待ってっかと思って寄ってみたけど案の定いねーしよ。こうやって全部用意して来てみりゃお前はラフな格好でビール片手に出てくっし…さすが優里様様だよなぁ?」

「何よ…イヤミ?どこにも出かけずにこうして家にいてやったんだから…それだけでも有難く思いなさいよね?」

「減らず口」

「なっ!?あ、あんたねぇ〜っ…」

「大体、仕事とプライベートは別だろうが。仕事でムカつく事があっても、それをプライベートに持ち込むなっつうの。そーいう頭の切り替えできねーかね、お前は」


出来てたら、今ここに私はいない。

きっと今頃は隆志のマンションでクリスマスを楽しめてただろう。

だけど仕方ないじゃない…こういう性格なんだから。


隆志はため息を漏らしつつ、靴を脱いで私の横を通り過ぎて部屋の中に入って行く。

私もボトルを持ったままそれを追いかける形で後に続いた。


「優里…まだ怒ってんのか?」


テーブルの上に持っていた荷物を置くと、隆志はそのまま私の体を抱き寄せ頬に一つキスをする。


「ひゃっ…あん。お、怒ってるわよもちろん。当たり前でしょう?」

「機嫌直せよ、優里。俺が悪かったから…年末に向けて膨大な量の仕事抱えてさ、ちょっとイラついてたんだ。今日だってゆっくりお前と過ごしたかったのに、昨日から施主が変更とか言ってきやがって余計にイライラが募ってお前にあたるような言い方して…ごめんな?」

「な…に…」


こんなに素直に謝ってくるだなんて…

ううん。いつだって隆志は真っ直ぐに気持ちを伝えてくれてる。

素直じゃないのはこの私。

隆志と付き合ってから、ずっと捻くれ者のままの私。

いい加減変えなきゃいけないって思ってるのに、中々素直になれなくて。

そんな時だった…



『ハッピークリスマ〜ス♪』



と、賑やかな声がブラウン管から漏れて私の耳に届く。



……そうよね。

今日は楽しいクリスマス。

隆志と初めて過ごす冬の一大イベント。

これをキッカケに…とは無理だろうから。

今日ぐらいは素直になれるかもしれない…よね?


「優里…ごめんな?機嫌直して仲直りしようぜ…折角のクリスマスなんだしさ」

「ん…私もごめん。本当は隆志のマンションで待ってるつもりだった…だけどダメだね、私ってヘソ曲がりだから。ごめん…隆志」


そう言って最大限の私の中の素直な部分を出すと、隆志はそれに対してグッと押し黙る。



なに…なぜ黙る?


不思議に思って顔を上げると、そこには驚いたような表情の隆志がいた。



「なによ…その表情」

「いや…優里が素直に謝ったと思って…」

「そりゃっ…たまにはそういう事もあるわよ!」


失礼しちゃうわね!そんな事で驚いた顔しないでよ。


「そっか…たまには、ね?」

「な、なによぉ〜…」

「いや。すげー嬉しいなぁと思ってさ…お前、俺と喧嘩した時は絶対謝らねーじゃん。ここまで俺に対して楯突くヤツなんて見たことねぇし、毎回生意気な女!って思ってんだけど…」


その言葉にピクンと私の眉が反応を見せる。

それを見た隆志が慌てたように次の言葉を口にした。


「まあ、これも惚れた弱みだよな?いつの間にか俺が先に謝る事がクセになっててよ…ったく。優里、嬉しく思えよ?俺ほどのいい男&出来るヤツが先に謝ってやってんだからさ…どこまで俺を溺れさせりゃ気が済むんだ、お前は」

「……嬉しいような事を言われてるようだけど…何気に上から目線かっ!」

「それぐらい言わせろ…気持ちじゃお前に完全にやられてんだからよ」


そう言って視線を絡ませると、そのまま顔を近づけて唇を重ねてくる。

うっとりする程の柔らかいキス。

隆志は私の持っていたシャンパンボトルを取ってテーブルに置くと、キスをしながら体を抱き上げ部屋を歩き出す。


「んっ…ちょっと。どこへ向かう気?」

「んなもん決まってんだろ?喧嘩の後のセックスは燃えるからなぁ…俺からのクリスマスプレゼントとして受け取れ」

「い、いらねぇしっ!ちょっ…やだっ!!チキンを先に食わせろっ!シャンパンを先に飲ませろぉぉぉ!!!」

「無理。却下!俺が買ってきたモンだ…どういう順番で楽しむかは俺が決める。とりあえずは優里を先に楽しむから大人しくしてろ」

「私はお前に買われたモンじゃねぇっ!」

「うるせーよ。大人しく俺に抱かれとけって」

「やだってば、もう!隆志っ?!」


隆志の腕の中で喚く私を完全無視して、ヤツは隣りの寝室へとやってくると、ベッドに私を下ろして動きを封じ込めるように体に覆い被さってくる。

ここで隆志と唇を重ねてしまっては最後だって分かってるから、首を左右に振って軽く抵抗を見せる。


「さっきの素直な優里はどこへ行った?お前だって俺が欲しいって思ってるクセに…素直になれよ」

「んなもん思ってねぇよ!大体、こういうイベントには順序ってもんがあるでしょうがっ!!」

「何だよ、順序って…イベントに順序なんてねぇっつうの」

「あるわよ…折角チキンもシャンパンもあるんだし…プレゼントだって用意してるんだから…」

「だから?」

「だから…シャンパンで乾杯して…チキン食べて…プレゼントあげてから、それからって…」


言ってて凄く恥ずかしくなってきた。

これじゃあ、まるで乙女みたいじゃない…私ってば何言ってんだろう?

徐々に頬が赤くなるのを感じつつ、隆志を見ると何とも言えない表情で私を見下ろしていた。



…………大体言いたい事は分かるわよ



隆志はじぃっと私を見下ろし、少し間を置いてから、小さくクスクスと笑い出す。

「優里…お前、何気に乙女?」

「うっ…うっさい!!そこ…深く突っ込むな…」

「いいじゃん…ククっ。…シャンパンで乾杯して?チキン食べてプレゼントあげて??…ぶはーっ!!何だよ、お前っ…」

「な、なによっ!そこまでバカ笑いすることないでしょうっ?」

「いや、すんげー可愛いんですけど…クククッ。…まさか優里がそんな事言ってくるなんて…ダメ…ツボ…笑い死ぬ…」


だったら死にやがれっ!!


隆志に笑われた事で更に頬が赤くなった私は、ぷいっと頬を膨らませて横を向く。

それに対してまた更に声を立ててバカ笑いを見せてから、隆志は思いっきり私の体を抱きしめてくる。


「なっ?!ちょっ…隆志?」

「もー。益々惚れた!何だよお前…可愛すぎるじゃんか。いやぁ…まさかお前がそういう事言うなんてなぁ…」


だから、深く突っ込むなっつってんでしょうがっ!


隆志はクスクスと笑ったまま頬に軽くキスをしてから、突然体から離れると体を起こす。

「じゃあ…いいぜ?お前の思う通りのクリスマスパーティーしてやるよ」

「え…何…」

「ほら、シャンパンで乾杯すんだろ?まだ冷えてるからグラス用意しろよ。それと、チキンも温めて」

「…隆志?」

「早くしねーとシャンパン温くなんぞ?」

隆志にそう促されて、私は言われるがままにグラスを用意して、隆志が買ってきたファーストフードのチキンの入ったパックをレンジで温める。




シュワシュワっと泡が立つピンク色をしたシャンパンが入ったグラス。

リビングのテーブルの上には何の飾り気もない、お皿に移しただけの湯気のたったチキン。

箱に入ったままのシフォンケーキ。

何とも味気ないクリスマス。

こんな事なら、やっぱり少しでも用意しとくんだったと今更ながらに後悔する。

ソファに座った隆志はシャンパングラスを手に取ると、メリークリスマス。と呟いて横に座る私にグラスを差し出してくる。

「メリー…クリスマス」

小さく私が呟いた後、チン。と綺麗な音を立ててグラスが合わさる。

「何だよ…お前が言い出した事なのに、乗り気じゃねえな」

「そんな事ないけど…味気ないなぁって思って…」

「そうか?ただ豪勢にすりゃいいってもんでもねーだろ?俺はこうしてお前と過ごせるだけでも満足だけどな?」

そう言って綺麗な笑顔を浮かべてくるヤツに対して、頬が僅かながらに赤く染まる。



なによ…そんな綺麗な顔してクサイ台詞言わないでよ。



「なに、赤い顔しちゃって。あ、俺に惚れ直したか?」

「自惚れんな…誰が惚れ直すかっつうの!」

「ったく。素直じゃねー女。そんなヤツにはクリスマスプレゼントやらねーからな?」

「えっ?嘘…用意してくれてるの?」

隆志の意地悪な笑みに対して、パッと一瞬にして私の顔に笑みが浮かぶ。

「お前…今までで一番いい笑顔してねーか?」

「気のせいでしょう?」

なんて言いつつも、隆志が言うように一番いい笑顔だったかもしれない。

だって、隆志から何かをプレゼントしてもらった事なんてなかったから…

「で、お前は?何を用意してくれたんだよ」

「私?私は…気に入ってるブランドの、シャツとネクタイと…ベルト」

時計にしようかとか色々悩んだんだけど、ヤツは結構いい腕時計を幾つか持ってやがるし、その他となると私の給料ではちょっと無理があって…シャツやネクタイとかは毎日変えるものだから、いくらあってもいいだろうと思ってそれに決めた。

寝室に置いてあった綺麗にラッピングされたモノを隆志に渡すと、嬉しそうな笑みを浮かべて受け取ってくれる。

そして、中身を見てから更にニッコリとした笑みを浮かべる。

「へぇー。中々いいセンスしてんじゃん…俺もここのブランドは好きだから、嬉しいよ。このセンスなら、これからお前に頼んでも大丈夫そうだよな?」

「へ?どういう事よ…」

「これから俺が着る服は普段着もスーツもお前に任せるっつってんの。仕事で中々買いに行けなくてさ…ローテーションの着回しだったからそろそろ新調したかったんだよ。営業たるもの、身につける物はセンスよく決めなきゃ印象悪いじゃん?」

「だからって私に買いに行かせようっての?冗談じゃないわよ…私はあんたの小間使いかっつうの」

「小間使いじゃねーって言ってんだろ?」

「じゃあ何よ…」

「下僕」

「死ね」


トンと、ヤツのわき腹をグーで突付くと、クスクス。と声を立てながら隆志は笑う。

それから隆志は徐に立ち上がると、キッチンへと向かいテーブルの下に置いてあった大きな紙袋の中から更に紙袋を取り出して、私の元へと戻ってくる。


「ほい…俺が用意したクリスマスプレゼント」

「え…嘘。これって…」


私が以前に一度だけ「このカバン欲しいのよねぇ」と、隆志に漏らした事があるもの。

だけど毎月の給料じゃ到底変えない代物で、ボーナスで買おうと思ってた。

覚えててくれたんだ…欲しいって言ってた事。

だけど、こんな高価なものを……


「これ、お前が欲しがってたブランドのバックだろ?」

「そう…だけど。こんな高価なもの…悪いよ」

「いいじゃん、俺がしてやりたかったんだから。もっと嬉しそうな顔しろよ…さっきみたいにさ」

「だけど…」

「なに、いらない?だったら返品してくっけど?」

「いや…貰う」


隆志がそう言って紙袋に戻そうとするのを、反射的に阻止して言葉がついて出る。



私ってば…なんとがめつい…



「ホント…素直じゃねー女」

「う…。でも…ありがとう。すごく嬉しいよ…私のあげたプレゼントとは割りに合わないよね…」

「いいって、気にすんな。その分、お前の身体で割りに合わせてもらうから…」


そう言って素早く私の肩に腕をまわして引き寄せると、唇を重ねてきた。

啄ばむようなキスを繰り返され、音を立てながら唇を吸われると、次第に私の脳が麻痺してくる。

服の裾から中に入り、胸に伸びてきた隆志の手を服の上から軽く押さえて唇を離す。


「んっ…まだ、チキン食べてない…折角温め直したのに…」

「もう我慢も限界…来た時からお前を抱きたくてウズウズしてんのに…。半分はお前の意見を聞いてやったろ?そろそろ大人しく俺のやりたいようにやらせろよ」

「ガキかお前は」

「何とでも言えよ。ヘソを曲げて拗ねてるお前よか、素直な俺はずっと可愛いガキだと思うけどね?」


このヤロウ…痛い所を突いてきて!


何も言い返せずに大人しくなった私に、ニヤリとした笑みを浮かべてから着ている服を全て脱ぎ捨て、私の身体からも取り去ってしまう。

熱く深い口付けの後、そのまま隆志の熱い唇が身体を這うと、自然と自分の身体にも熱が帯びる。

身体が覚えてしまった隆志から与えられる悦の数々。

それを求めて、私の秘部は熱い蜜で潤い身体全体で隆志を求める。


隆志のキスが好き。

隆志の温もりが好き。

隆志の香りも色っぽい仕草も、俺様な態度も私に向けられる優しい笑顔も。

全部全部本当は大好き。

そう素直に言えればどれだけ可愛い女になれるだろう…

そう言えない私は、どれだけ可愛くない女なんだろう…



もしもサンタクロースがこの世に実在するならば、

私は間違いなくこう願うだろう。プレゼントなんていらないから…




――――私を素直で可愛らしい女にしてください…と。




口が悪くて態度も悪い…こんな私のどこがいいんだろう?と不思議に思うけど…


「優里…もう、はちきれそう…中、這入るぞ?」

充分身体を愛撫し、蜜で潤った私の中を指でかき乱してから、隆志はそう切なそうな声を耳元で響かせて、入り口に自身をあてがい一気に中を貫いてくる。

「あぁぁんっ!!」

「ぅぁっ!…やっぱ、すげ…いい。あんま持ちそうに…ねえ…や」

隆志は私の腰を持ち、激しいくらいに中を突いてくる。

律動を送られるたび、角度を変えて中を擦られるたびに、快感で肌が粟立ち痺れが走る。

限界が近くなった私は、無意識に腕を伸ばして隆志の腰を自分に引き寄せる。

それを合図かのように隆志も身体を折って私に覆い被さってくると、更に奥を攻め立ててきた。

リズミカルに響く身体を打ち合う渇いた音。

律動に合わせて漏れる卑猥な水音に溢れ出す蜜。

耳元から隆志の熱い色っぽく吐き出される息と共に、微かに響く掠れた声。


「今までで…一番クソ生意気でっ…可愛くねぇ女だけどっ…俺は…お前に完全に溺れてっから…責任取れよな?…こんなイイ男を独り占めできるなんてっ…すげーぞ、お前っ」

「はんっ…言ってろ…あぁっ…あんたこそっ…こんなイイ女を夢中にさせてんだからっ…最後まで責任っ…取りなさいよねっ…あ、あぁっ…やぁぁんっ!!」

「あぁ…責任持って…最後まで面倒見てやるよっ…こんなじゃじゃ馬は…俺しか扱えねぇからなっ…!!」

徐々に早くなる腰を打つリズム。

私は奥へ奥へと導くように、腰を自ら少し上げて隆志の腰にまわした腕を更に引き寄せる。

「あぁっ…隆志っ…も、イクっ…ダメっ…も…あぁぁんっ!!!」

「くぁっ…おまっ…そんな急に締めたらっ…あぅっ…ぁっ…っく!!」

グッと隆志の腰を掴んで最後快感の渦に巻き込まれるのを感じていると、程なくして隆志も私の中で果てるのが感じられた。



お互い、荒く息を吐きながら軽くキスを何度も交わす。

「愛してるよ…優里」

「私も…愛してる」


何度言葉にしても恥ずかしくなるけれど、これだけは素直に言える私からの言葉。

それを嬉しそうに微笑みながら受け止め、また一つ唇にキスをしてから隆志は耳元で囁く。


「お前…さっき何気にすげー事言ったの、分かってっか?」

「はぁ?すげー事って…何?」

私は隆志の言ってる意味が分からずに、首を傾げてヤツを見上げる。



すげー事…何か私、言ったっけ?



「まぁ…覚えてねんならいいけどさ。今は俺の胸の内に留めとく」

「や!ちょっと…教えなさいよ!!気になるじゃない」

「ん?教えてやんねぇ。サンタにそれが伝わったなら、近いうちに叶うんじゃねぇ?」

「はぁぁぁ?何、ワケの分かんない事言ってんのよ…教えなさいってば!!」



隆志はそれに対してただ微笑むだけで何も教えてくれなかった。

そう…私の左手の薬指を優しく撫でながら。



私がその意味を理解するのはもう少し後のお話になるんだけど…

今の所の私の願いは、



――――隆志に愛される素直な女になれますように…かな。







** 70万Hitキリリク作品 FIN **

明里さまSpecial Sanks!!




明里さん…本当に、本当に遅くなってしまって申し訳ありません!!
キリリクを頂いたの、8月なのに…あぁぁん(滝涙)ごめんなさぁぁい。
覚えていてくださってるでしょうか…。
今回はシチュの指定などがなかったので、クリスマスVer.で仕上げてみましたvv
い…いかがでしょうか。
お楽しみいただけたら嬉しく思います(o^▽^o)
明里さん、本当にありがとうございました!!
皆様も久し振りの本編アップのこの子達…お楽しみいただけましたでしょうか〜。
相変わらず、えっちぃの無いとダメみたいです…この子達(苦笑)

H17.12.6 神楽茉莉


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