*大嫌い!! 「超ムカツク!!」 隆志の家に上がって、運ばされたダンボール箱を置くなり私は叫ぶ。 「・・・・・んだよ、急に叫びやがって。」 隆志は訝しげに眉を寄せながら、自分も持っていたダンボール箱を私の置いた横に、よいしょっ。と呟きながら置く。 「ちょっと、あんたね。無神経にも程があるんじゃないの?他の女の子からもらったチョコレートの山をよりによって彼女の私に運ばせるなんてさ、何考えてんのよ!!」 「あぁ、その事。なぁに、優里ちゃん俺がモテんのに怒ってんの?」 涼しげな表情で私を見るヤツ。 その表情にもムカツキを覚え、咄嗟にヤツの両頬を思いっきりつまみ上げる。 「怒るも何も、その無神経さにムカついてんの!!」 「いってぇ!!・・・おまっ・・・離せって。仕方ねぇじゃん、俺ってモテちゃうからぁ♪断っても断っても無理矢理持たされちゃうんだよね。捨てるに捨てらんないし、取引先の子達のもあるから無下に断れねぇじゃん?」 「断れ。」 「だから、極力断ったじゃねぇか。これでも去年の半分に押さえたんだぞ?俺の努力を評価しろ。」 ・・・・・押さえてダンボール箱2つ分か? 一体去年はいくつチョコレートもらったのよ、コイツ。 「あんたは芸能人か。」 私は、ぼそっ。と呟くと、隆志を置いて一人ソファに腰を下ろす。 「優里〜、機嫌直せって。全部親戚の子とかに送って俺は食わないんだしさ。まぁ、 「許せ?許せって上から目線か!もうちょっと違う言い方があんでしょうが!!許してください。とかお許しください。とかってさ。」 「そんな事でイチイチ目くじら立てて怒ってっと、シワが増えっぞ?」 クスクス。と笑いながら、隆志は私の横に腰を下ろす。 ぬわぁんだ!その態度は!! 「キーーーッ!ムッカツク!!ほんっとそういう態度大っ嫌い。」 「もぉ。俺は優里しか見えてねぇんだから、そんな事でイチイチ怒んなって。な?優里のチョコしか食わねぇからさ。」 隆志は私の身体を抱き寄せると、ちゅっ。と軽く唇を合わせる。 「・・・んなモンねぇよ!」 「またまたぁ。そんな事言って、ちゃんと作ってたりしてんだろ?」 「だから作ってないって。バレンタインだからって必ずしも女からチョコを貰えるなんて思ってもらっちゃ困るわね。」 「えぇぇぇ!!嘘だろ?マジかよ!バレンタインだぞ?バレンタイン!!」 「だから何よ。」 「おっま、俺がどんだけこの日を楽しみにしてたと思ってんだよ。去年は義理チョコすらお前から貰ってねぇんだぞ?今年は本命チョコ貰えるってすっげぇ楽しみにしてたのによ・・・。」 「あらあら、それはご愁傷様。本命チョコって学生じゃあるまいし、そ・れ・に!皆さんからもらった愛情たっぷりのチョコレートを食えばいいじゃん。」 私は、ふんっ。と鼻を鳴らしながら、ぷいっと横を向く。 「お前ねぇ・・・すっげぇ僻み入ってんぞ、それ。まだ怒ってんの?」 「怒ってねぇよっ!」 「その言い方・・・・・おもっきり怒ってんじゃねぇか。なぁ、機嫌直せって。」 隆志はヨシヨシ。とでも言うように、私の身体を抱きしめて頬や首筋に唇を這わしてくる。 「んもぅ、触んないでよ変態!!」 「嫌だね。優里の機嫌が直るまで離さない。」 「んっ!・・・ちょっ、ちょっと。どうして押し倒してんのよ!」 「ん?チョコ貰えねぇんなら優里を食う。お前もお待ちかねみてぇだし?機嫌も直さなきゃだしなぁ?」 首筋に唇を這わせながら、パンストの上から敏感な部分を指でなぞってくる。 「あっあんたが触ってくるからでしょ?!ちょっとこんなの卑怯じゃない!!」 「何が卑怯だよ。お前が欲しがってっからそれに答えてやってるだけじゃん。」 「誰も欲しがってねぇっ!・・・あぁっん、もぅ隆志?!」 「素直になれって。それに、チョコの恨みは大きいからな。楽しみにしてたのに、作ってこなかったお前が悪い。黙って俺に抱かれとけ。」 「あっんたね!もっとムードってモンがないの?抱かれとけって・・・ほんと、何様のつもりよ!!」 「神様。」 「・・・・・。」 『俺様』じゃなく・・・・・更にその上を言いやがったな。 軽く頭痛を覚え、目を閉じるとすかさず隆志の唇が私の唇に重なる。 しまった・・・こうなったら、もう何も言えなくなっちゃうじゃない。 必死に抵抗してもヤツの身体はびくとも動かなくて。 繰り返される熱いキスに、次第に私も何も考えられなくなってくる。 「んっ・・・んっ・・・。」 どうも隆志のキスに弱いみたい。一度重ねられると、もっと。って求めてしまう。 お互いの奥深くで絡み合う舌。 私はヤツの首に腕をまわし、引き寄せてキスをねだる。 隆志もそれに応えるように角度を変え、私に刺激を与えてくる。 いつの間にか脱がされていたパンストと下着。隆志は指を私の中に入れてくると、くちゅくちゅっ。と軽く掻き回す。 「はぁっ・・っん!!やっぁっ。」 「嫌、じゃねぇだろ?俺が欲しいって言えって言ってんだろぉが。」 「言わっ・・ないってばっ!!」 「クスクス。強情っぱり。」 隆志はおかしそうに笑いながら私の身体を抱き起こすと、自分はソファーに背中を預けて座り、私を跨がせる格好にすると、一気に自身を中に突き上げてくる。 「はぅっん!!・・・あっん・・・すごっ・・。」 「っく。相変わらず・・・締りのいいこって。たまんない、優里の中。」 私の腰を持って突き上げながら、顔を見上げてくる。 その顔が愛しくて、この顔を見るといつも私から唇を重ねてしまう。 身体を激しく揺らされながら、重なり合うお互いの唇。 部屋には繋がった部分から漏れる水音が響き、与えられる快感に酔いしれる。 お互いにまだ服を着ているだけに、繋がる部分が妙にイヤラシク感じる。 「はぁっん・・・隆志・・・ダメッ・・も、イキそう・・・。」 「もぅ?早いじゃん、まだまだ・・・何度でも鳴かせてやる。」 「やぁっ・・・明日も仕事なのに・・・やめてよ。」 「チョコを作ってこねぇお前が悪いって言ったろ?今日は本気で壊す。」 チョコ、チョコって・・・・・そんなに欲しかったか?手作りチョコ。 子供じゃあるまいし、営業成績トップのあんたが、たかがチョコ如きにこんなに躍起になってるって知れたらとんだ笑いもんだわよ? 身体を激しく揺さぶられながら、そんな事がふと頭を過る。 「ダメッ・・・あぁっん・・・イクっ・・・も、イクっん!!」 「うぁっく・・おまっ・・・そんな急に締め・・・あっクソっ・・・っ。」 「あぁぁぁんっ隆志ぃっ!!」 「優里っ・・・・っ!!」 私が果てると、それから程なくして奥深くで隆志が欲望を吐き出す。 「・・・・・お前をもっと鳴かせてやろうって思ったのに。」 ベッドで横になりながら、隆志が私の髪を優しく撫でる。 「もぅ充分でしょうが!!何回してると思ってるの?」 「まだ3回?」 「・・・・・あんたは3回かもしれないけどねぇ・・・私はもっとなんだから。」 「クスクス。足りねぇだろ?」 「足りてるわよ、バカっ!明日、会社に行けなかったらあんたのせいだからね!!」 ガルルゥッ!とでも言うように、隆志に噛み付くとおかしそうに笑い声を立てる。 「あははっ。そんだけ元気がありゃぁ大丈夫っしょ?ま、夜はまだまだ長ぇからなぁ。」 「・・・まだする気?」 「優里次第。」 「もぅ無理っス!!」 「じゃぁ、大丈夫ッスね。」 にっこりと爽やかな笑顔を浮かべて私を見る。 ・・・・・。 一度死ね。そんな言葉が頭に浮かぶ。 「あぁ、そうそう。忘れてたけど・・・。」 私はそうワザと、今、思い出したかのようにカバンから小さな箱を取り出すと、隆志の胸の上にぽんっと置く。 「・・・・・あんだよ。」 「・・手づ・・・イン・・・ョコ。」 「は?・・・何だって?聞こえねぇって。」 「私があんたの為に作ってやった手作りチョコ!・・・有難く受け取れ!!」 頬を染めながらそう言い放つと、ぽかん、と口をあけたヤツの表情。 ・・・・・何よ、その表情。 「お前・・・さっきチョコねぇって。」 「あんたが他の女の子から貰ったチョコを嬉しそうにダンボールに詰めて私に運ばせたから、ムカついてたの!こんなにいっぱいあるんなら、私のなんていらないじゃない?って。でも、折角作ってやったから・・・あげるわよ。」 さっきの表情とは打って変わって、途端に本気で嬉しそうな顔をする隆志。 ・・・・・そこまで喜んでくれると思わなかった。 「すっげぇ嬉しいんですけど。」 「言っとくけど、一番出来損ないのイッコだからね。」 そう、私の口から、憎まれ口がポンと出る。・・・全く、素直じゃない私。 隆志は私が渡した小箱を開けると、ボソッと呟く。 「・・・・・マジで一個しか入ってねぇじゃん。」 「何よ、文句あんの?!貰えただけでも有難く思いなさいよ。」 仕方ないじゃない、時間がなくって急いで作ったら、マトモに仕上がったの1個しかなかったんだもん。 「クスクス。いんや、文句なんてねぇけどさ・・・クスクス。何か、優里らしい。」 「でも、来年も今回みたいに貰って帰って来たら、今度こそ本気でナシだから。」 「へぇへぇ。肝に銘じておきます。」 「軽い返事ね。ちょっと・・・真面目に聞いてるの?」 「ん〜・・・すっげぇ、ウマイ。他のチョコなんてもう食えねぇな。」 「・・・・・。」 私の作った最高のチョコを口に含み、目を閉じながら味わう隆志を見たら、何も言えなくなってしまった。 ・・・・・ま、今回はその顔に免じて許してあげるわ。 私が軽くため息を付くと、最高にウマかった。って、隆志からの甘い甘いキスが返ってきた。 + + FIN + +
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