〜*〜 Eternal Lover 〜*〜



――――私は一体どうしたいんだろう?



アルコールがまわるぐちゃぐちゃの頭で色んな事を考える。

自分の中を占める男としての正樹の存在。

あの居心地のいい『仲間』としての正樹の存在。

私はどちらを求めてる?

違う…私が対象にしてるのは『仲間』ではなく、正樹の存在そのもの。

私はずっと正樹が好き……だったの?

最初から正樹の事を『仲間』としてなんて見てなかったの?

どうしたらいい…私はどうしたらいいの?



客観的に見ればいとも簡単な問題。

そう…自分に素直になれば、すぐに答えが出るハズなのに。

自分で自分の首を絞めるように難題かのように頭の中で考えている。



その難題にしてしまっている問題のひとつがここにあるのかもしれない。

正樹にも柵があったように、私にとっての柵が…



私は彼氏の住むアパートに辿り着き、ずっと前に貰った使い慣れた合鍵で中に入る。

彼氏の徹はもう寝る体勢に入ってるようで、薄暗くテレビだけがついてる部屋の、ベッドの中から頭を少しだけ擡げて、私の顔を確認するとまた元の位置に頭を戻す。



「なに、こんな時間に珍しいじゃん」

「ん…ちょっと飲み会が早く終わったから。もう寝るの?」

「あ?んーまぁ。明日も早いしな…つーか、酒くせーなお前」


私がベッド脇に近づくと、訝しげに眉を寄せながら迷惑そうに言葉を吐く。

それに少し気落ちしながらも、ベッド脇に腰を下ろして徹の顔を覗き込む。


「ねぇ…私の事好き?」

「はぁ?なんだよ、藪から棒に…」

「いいから答えてよ…私の事好き?私は徹にとって必要な存在?」

「あははっ!お前、すげー酔ってねぇ?はいはい、好き好き。俺にとって必要な存在…これでいい?明日も早いからもう寝るぞ?」

「笑い事じゃなくて!ねぇ…ちゃんと言ってよ」

「あんだよ、ちゃんと言っただろうが。シツコイぞ、沙代子」


徹は、はいはい。とでも言うように軽くあしらうと、そのまま寝返りを打って私に背中を向けてしまう。



私は徹の本当の気持ちが聞きたいの…。

あなたにとって本当に私は必要なの?

ちゃんと言ってよ…じゃないと、私…



――――奥底にしまった自分の気持ちに気付いてしまう



「…徹?」

「あぁ?」

「しよ?」

「……眠いっつったろ?夜中に押しかけて来ていきなり「しよ?」かよ。勘弁してくれよ」

「じゃあ…キスして…」

「もう寝る…お前も早く寝ろよ」



徹は面倒臭そうにそれだけ言い放つと、布団に包(くる)まって眠ってしまった。



真っ暗な部屋にタイマーのかかっているであろうテレビの小さな音と、徹の寝息だけが悲しげに響く。



私は何にしがみ付いてるんだろう…

このままこんな関係を続けて、2人とも幸せなの?

寂しいよ…ねぇ…



――――会いたいよ…正樹。



私は溢れ出す涙を止める事が出来ずに、横から徹の寝息が漏れてくるのを聞きながら、カバンから携帯を取り出しメモリーを出す。



『正樹』



その文字を見ただけで、私の胸は痛いくらいに締め付けられる。

正樹……

私は、ピっと通話ボタンを押して、コール音が聞こえたと同時に慌てて終了ボタンを押す。



ダメだよ…こんなの。

これじゃ、まるで自分の寂しい気持ちを和らげる為に正樹に頼ってるみたいじゃない…ダメよ。



そう思い返した時だった…

ピピッとメールの着信音が小さく鳴り響く。



……正樹



メールの内容を見た時点で、私はカバンを掴んで部屋を飛び出していた。






――――『今すぐ来いよ』




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