*Love Fight






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サンサンと照りつける太陽。眼下に広がる青い海。

夏休み真っ盛りのビーチは早めの時間だと言うのに、親子連れやカップルで賑わっている。

鼻をコパトーンの香りが霞め、あぁ夏だなぁと実感させられる。

今日、私達は4人で電車に乗って海水浴に来たの。

そう、海水浴・・・・・来たくなかった。

何でって?それはね・・・・・。



「――――うわぁっ。すっごい人だよね。さすが夏休み・・・どこ場所取る?」

「おぃ、恵子。あんまサクサク先に行くなよ。迷子になるだろ?」

「直人達が遅いのよ。ほらっ一番ドンケツを歩いてる美菜!!早く歩きなさいって。」

恵子はぷりぷりと先頭を歩きながら、そう私を捲くし立てる。

「わぁっ。待ってよ・・・だってぇ、砂に足を取られてうまく・・・うっうぇっ!!」

ボスっ。という鈍い音と共に、私の荷物がそこいらに散らかる。

・・・・・痛い。

まっまた転んじゃったよ・・・・・。何でいつも私はこうなんですかね。

私は半分自分に嫌気をさしながら、散らばった荷物をカバンに戻していると、 ひょいっと突然私の目の前に日焼け止めが差し出される。

「ほらっ。美菜、ゆっくり歩いたらいいから。」

「長瀬君・・・あっありがとう。でもでも、早く歩かないと迷子になっちゃうもん。」

「クスっ。美菜一人ならともかく、俺も一緒なんだから大丈夫だって。」

「ぅっ・・・そりゃそうですけど・・・。」

長瀬君はクスクス笑いながら、私の荷物を持つと手を繋ぎ歩き出す。

「あっあのっ・・・荷物自分で持つよ?それでなくても長瀬君他に沢山持ってるのに・・・。」

彼の肩には小さいけれど、クーラーボックスやら何やら沢山ぶら下がっている。

よくまぁこんな物を地元から持ってきたもんだよ。と苦笑が漏れちゃう。

「いいよ。また転ばれたら大変だからね。俺が持っといてあげる。」

ニコッと笑うと、再び前を向きゆっくりと柊君の後を追う。

あぁ・・・毎度の事ながら、私ってば長瀬君のお荷物よね。

がっくりと肩を落としながら長瀬君に引き連れられ、恵子が取ってくれた場所へと辿りつく。

「美奈、俺は迷惑だなんて思ってないから。もっと俺を頼ってくれていいよ?」

「うえっ!なっ何で私が考えてる事わかっちゃったの??」

「クスクス。やっぱりそう思ってたんだ。美菜の事だからどうせ自分は俺の「お荷物」だ、みたいな 事考えてたんだろ?美菜の顔見たらわかるよ。すぐに出るから。」

・・・・・・・超能力者ですか?

「なっ何でも分かっちゃうんだね。長瀬君すごいよ。」

「俺が凄いんじゃなくて、美菜が分かりやす過ぎるの。顔を見たら何考えてるかすぐ分かるから。」

「うっ・・・そっそんなに顔に出てる?自分では出てないつもりだけど・・・。」

「じゃあ、試しに今何か考えてみなよ。当ててあげるから。」

そんな事を言いながら、長瀬君はレジャーシートを広げる柊君を手伝いながら笑う。

そっそんなに分かりやすい顔してるのかしら、私って。

「ほんとぉ?じゃぁ、ん〜っとねぇ・・・・」

――――『長瀬君、大好き』・・・って、咄嗟にこんな事が思い浮かぶ私ってどうよ?

そんな事を思いながら長瀬君を見つめると、ふっ。と優しく微笑んで私の顔を覗き込むと 耳元で小さく囁く。

「俺も美菜が大好き・・・でも、そんな顔で見つめられると理性効かなくなっちゃうよ?」

「・・・・・・・・。」

ぼっ!!と顔に点火されたのが分かる。

あっ熱い・・・顔が熱い・・・うわぁぁっ・・・何か顔が・・・ニヤける。ぐふっ。

「ちょっとそこっ!イチャつくのもいいけど、先に用意しちゃう!!」

「わっ!ごっごめん、恵子。すぐっすぐ用意します!!!」

「ったくもう。ただでさえクソ熱いんだから、余計温度を上げるんじゃねぇよ。このっ。」

柊君はクスクス笑いながら、長瀬君のお腹辺りに拳を当てる。

うるせぇよ。とそれを交わしながら長瀬君が笑う。

・・・最近よく長瀬君が笑う姿を見る気がする。やっぱり付き合い出してよく会うようになった からかな?

すっごく優しい顔で笑うんだよね。普段冷たそうな顔をしてるから余計に思うのかもしれないけれど。

「恵子、お前ら水着に着替えてくんだろ?先行って来いよ。俺らここで荷物番しといてやるから。」

「心配ご無用。私達家から着てきたんだよねぇ、美菜。この服を脱げば終りなの。」

「うっうん。更衣室混むだろうからって家から着てきたんだ。」

「なんだ、そうなんだ。じゃあ俺ら着替えてくるわ。行こうぜ、修吾。」

「おぉ。」

ちょっと行ってくるね。と言う言葉を残し、長瀬君達は着替えに行った。

そんな2人を見送ってから、恵子はニヤっと笑いながら私の服の中を覗き込む。

「わっわわっ!なっ何?恵子。」

「よしっ。私と一緒に買いに行った時の水着を着てきたわね。」

「うっうん。だって・・・水着なんてスクール水着以外持ってないもん。」

「クスクスっ。その水着なら、長瀬も鼻血出ちゃうんじゃない?」

「なっ何て事を言うのよ、恵子。でも・・・これ、大人過ぎないかなぁ。ビキニだよぉ? ダイエットしとけばよかったよ。」

そう言いながら、着ていたキャミソールと短パンを脱いでたたむと、カバンの中にしまう。

生涯初のビキニ・・・しかもかわいい柄が入ってるものの基本色が黒。

どわぁっ・・・大人すぎる。

何だか妙に恥ずかしいよ。ほんと、もう少しダイエットしとけばよかったぁ。

「あんたねぇ、それって私に対するイヤミですか?」

軽く私を睨みながら、恵子も着ていたTシャツとミニスカートを脱ぐとぽんっとカバンの中に放り入れる。

イヤミって・・・そのスタイルを持ってどこがイヤミなんでしょう?

恵子も赤地で可愛いデザインのビキニなんだけど、露出している部分がすっごく細くて華奢で・・・いいなぁ。スタイルが いいのって。

「えぇ〜。私は恵子が羨ましいよ?だってスタイルいいんだもん。何着ても似合うし、水着姿だって モデルさんみたいだよ。」

「あのねぇ、いくら細くったって出るとこ出てなきゃ意味がないでしょ?あぁ・・・私も美菜の体に 生まれたかった。色白のもち肌で、出るとこ出てて足とか細いんだもん。美菜ってさぁ、何カップよ。」

「はいっ?!とっ突然何を言い出すやら・・・。ん〜・・D〜Eカップかなぁ。」

「うわぁっ。マジで?私なんてAよ?羨まし過ぎるわ。」

恵子は、はぁ。と一つため息を付くと器用に自分の髪の毛をクルクルっとまとめてクリップで留める。

わぁ。髪の毛アップするだけですっごい大人っぽくなっちゃうんだね。綺麗な顔がより一層引き立つ というか・・・うん、大人の女性って感じ。私には無理だわ。

ぼぉっと恵子を見ていると、ほら、美菜もやってあげる。と言って私の後ろにまわると、クルクルっと 髪の毛が引っ張られその場所で留まる。おぉ、何か首の辺りがスースーするぞ?髪の毛アップしたの なんて何年振りだろう・・・中学以来かもしれない。

これでよしっ。とぽんっと両肩を叩き私の顔を覗き込むと、かわいぃって恵子は抱きついてきた。





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