*Love Fight










「美菜ぁ、恵子ちゃんが迎えに来てくれたわよぉ。」

「はいはい、今出ようと思ってた所!じゃあ、お母さん行ってきま〜す!!」

「は〜い。気をつけて行ってくるのよ。」

私は着替えなどで大きく膨らんだバッグを肩に担ぐと、元気に外へ出た。

「おはよう、恵子。お待たせ!!」

「美菜っ、おはよう。天気最っ高にいいよね!!これが、合宿じゃなくて普通の旅行なら もっと楽しかったのにねぇ。」

そういいながら、私と同じように大きなバッグを肩から担いでいる桂木 恵子(かつらぎ けいこ) は空を見上げて一つ息を吐く。彼女の茶色く染めてカールがかかった髪がふわっと風に揺れる。

彼女は私の幼稚園時代からの親友で家もご近所。いわゆる幼馴染ってやつ。

しっかり者の恵子は昔から何かとドジを踏む私を助けてくれる。お姉さんみたいな存在。

私は戸田 美菜(とだ みな)成績も容姿も何もかもが至って普通の高校2年の17歳。

他の子と違う特技があるとすれば、所かまわずドジをしまくる事・・・。

うっ・・・自分で言ってて悲しくなるわ。

私達は今日から2泊3日で、学校の行事である夏休み前の合宿に行くの。

荷物ってそんなにない筈なのに、みるみるいっぱいになっちゃってすごく重たい。

多分、恵子もそうだろうな。だって右肩異様にあがってるもん。

「ほ〜んと、旅行だったら楽しいのになぁ。」

「でも、美菜の場合旅行じゃなくっても楽しいんじゃない?だって、同じ班に長瀬修吾が いるもんねぇ。」

ほけ〜っと空を見上げる私の顔をニヤニヤと笑いながら恵子が覗き込む。

「うっ・・・恵子。何を言っちゃってるんですか。」

「え〜、だって美菜1年の頃から長瀬の事好きじゃん。ほ〜んと健気なんだから。見てるだけで いいのぉ?今回が絶好のチャンスだと思うけど?早くしないと誰かに取られちゃうわよ。あいつ 意外に陰で人気あるんだから。クールなんだけど、たまに見せる笑顔がたまんないぃって。」

「なっ何?チャンスって。・・・・・そんな事言ったってぇ。恵子だって柊君と同じ班じゃない。」

途端に、私の顔がゆでだこみたいに赤くなる。



そう、私は1年の時から密かに好きな人がいる。(恵子にバレてるから密かとも言えないけれど)

彼の名前は長瀬 修吾(ながせ しゅうご)君。

同じ高校2年生のクラスメイト。

彼は、クールというか普通にしてると近づきがたいオーラを醸し出してて話しかけにくい感じ。

実際話をする時もいつも無表情に近い顔で受け答えするから、みんなどこか彼とは一線を引いてる感じ。綺麗な顔だから、無表情で話されると余計怖い印象になっちゃうんだね。

でも恵子が言うように、話の最中に時折みせる笑顔がすっごくかわいくて。

男の人に【かわいい】というのもどうかと思うけど、でもこのギャップがたまらなくいい!!

背が高くって、スポーツもできる秀才。顔はジャニーズって感じではないけれど、綺麗な顔をしてる。

1年の時にね、同じ委員をしてて(今年は同じクラスですごく嬉しかったぁ)ドジばっかり踏んでる 私を文句も言わずに笑顔で助けてくれて・・・気が付いたら好きになってた。

でも、私もそこまでおバカじゃないから長瀬君と私が不釣合いな事ぐらいわかってるわよ?

スポーツ万能の秀才さんと、ドジで勉強も得意ではないおバカな私では釣り合わないって。

多分、恵子みたいにかわいくて頭もいい子と似合うんだろうなぁ。

恵子は昔から男の子にモテてるの。だって、すごいかわいいんだもん。

男の子がほっとかないよね。

もちろん、現在彼氏アリ。も〜ラブラブなんだから。

恵子の彼氏はこれまた同じクラスの柊 直人(ひいらぎ なおと)君。

1年の頃から付き合っているんだけど、訳あって全校生徒公認の仲なの。

はたから見てもお似合いのカップルって感じ。美男美女で。

2人を見ているとすっごくうらやましい。

長瀬君と柊君は中学時代からの友達で、すごく仲がいいの。

で、恵子と柊君が付き合ってるお陰でラッキーにも今回同じ班になれちゃったんです!!

恵子、柊君と付き合ってくれてありがとぉぉ〜〜!!!

長瀬君とは1年の時委員を一緒にやってたからそれなりに会話は出来るんだけど。

私どうも男の子って苦手というか・・・どう接していいかわかんなくて。

話す時なんて顔が真っ赤になっちゃうし、頭の中なんて真っ白。

きっと男の子は私の事、変な子って思ってるだろうなぁ・・・。



「あぁ。私も恵子みたいにかわいくて頭よかったらいいのになぁ。」

「何言ってんの。美菜も十分かわいいわよん。もぉ、ほっとくと何しでかすかわかんなくて目を離せないんだからぁ。護ってあげたくなっちゃう。」

ぎゅって恵子は抱きしめてくれるんだけど・・・それって、私がドジだからなだけじゃ。

「美菜ももう少し自分に自信を持ちなさいよ。結構人気あんのよ、あんたって。男子から見ても ほっとけないらしいよ。・・・これ、直人情報ね。」

「うっ嘘ぉ〜。そんな訳ないよぉ。何も取柄ないんだから。顔だっていたって普通だし・・・。」

「取柄?あるじゃない。」

恵子が私を見てニヤニヤっと笑う。な、何よ、何ですか・・・その目は。

「えぇ?何がある?」

「ほっとけない程、ドジな所!!」

「おぅっ・・・・・嬉しくありません。」

「くすくすっ冗談よ。美菜はね、小さくて丸い子犬みたいな感じなの。誰でも子犬見たら 放っておけないでしょ?それと一緒よ。かわい〜くてついついかまっちゃうの。ふふふっ。」

「何ですか、それは。・・・ぶぅ。あまり喜べなぁい。」

ぷくっと頬を膨らまして私が言うと、そういう所がかわいいの!!って言ってまた恵子は私に 抱きついてきた。

もぉ、そういう所ってどういう所よぉ。

「ま、この2泊3日頑張りなさい。応援してあげるから!!案外長瀬もまんざらでもないかもよ!?」

「なっ!!・・・どういう意味ぃ?」

「そういう意味。さっ、取り合えず早く行こう!!」

そう言って意味シンな笑みを浮かべると、恵子は私の手を引いて歩き出した。

『まんざらでもない』って?どういう意味よぉ・・・・恵子ぉ!!



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