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*Ｓｅｃｒｅｔ Ｆａｃｅ 午前０時を回ったところ。 俺はいつものように姫子のバイト先まで迎えに来てて、彼女が終わるまで原チャリに跨って出てくるのを待っている。 夏に近づきつつある今の時期は夜ともなると涼しくて、待ってるのも苦じゃない。 冬のあの厳寒な時はキツかったよな。それでも待ってる俺って結構健気かも？ なんて、ハンドルに肘をついて手の上に頬を乗せながらそんな事を思う。 昔の俺じゃぁ、絶ってぇそんな事しなかったもんな。 ま、それだけ姫子に惚れてるっつぅ事か？ ふっ。と口から軽く笑みが洩れた所で、ごめんねお待たせ。と、姫子が近づいてくる。 俺は頬を乗せていた手を伸ばし姫子の頭を引き寄せると、ちゅっと軽くキスをする。 「お疲れさん、忙しかったか？」 「んー、ちょっとね。やっぱり夏に近づくにつれて会社帰りに寄って帰る人が多くって。でも、もうちょっとしたら受験勉強に入らなきゃいけないから、今のうちに頑張らないと。」 「頑張らないとって…最近部活の方も出なくてよくなってきたから、結構平日の夜もバイト入ってんじゃん。働きすぎじゃねぇ？」 「そうかなぁ？まぁ…稼げる内に稼いでおかないと？って感じ。」 「そんなに根詰めて働かなくても十分食費ぐらい出てんだろ？俺も殆ど姫子ん家に入り浸ってるから、親父の仕事手伝ったり、知り合いの店でのバイト代を渡してるし……もしかして足りねぇか？」 「ううん、新一からは十分貰いすぎてるぐらい貰ってるよ？逆に申し訳ないぐらい。だってそれで光熱費とか払えちゃってるから、お父さんとかびっくりしてたもん。でも…んと、何て言うのかな。新一から貰ってるからってそれに甘えてちゃいけないなぁー、とかって思って。」 「別にそんなの甘えりゃいいじゃん。足りなきゃ俺もバイト増やすし…過労で姫子が倒れたら、俺泣くぞ？」 「……あのね。私まだ学生なんだから、過労とかって言わないでよ。そんな、倒れたりなんてしないわよ……」 新一が夜、ゆっくり寝かせてくれたらね？と、姫子は意地悪く付け足す。 「……どういう意味だよ、それは。」 「だって、バイト入ってる日は必ず迎えに来てくれてそのまま家に泊まって帰るじゃない。その度に……激しいんやもん！」 頬を少し赤く染めて、姫子は俺の背中をバンッ！と叩く。 あ、そういう意味ね。 それは……仕方ねぇじゃん。姫子が誘ってくんだもんよ。 そんなニュアンスの事を姫子に言うと、更に頬を赤くして、誰も誘ってない！！と先程よりも強めに背中を叩かれる。 「ってぇ！……暴力はんた〜い。」 「新一がアホな事言うてるからやろ？！」 「別に…正直に言ったまでじゃねぇか。」 「あのねぇー……」 「はいはい、続きは帰ってから。ほら、後ろ乗れって。」 そう姫子を促しながら、キーをまわす。 ウィ〜ン…ウィッウィッウィ… ……あれ。 「なぁ、姫子。最近、この原チャリ調子悪くねぇ？エンジンかかりにくいんだけど。」 「あぁー、やっぱり？ここんとこ調子が悪いのよね。そろそろ寿命かしら……人が使ってたのを格安で譲ってもらったから、文句言えないし。」 「今度、姉貴ん家の原チャ貰ってきてやるよ。ちょっと前にいらねぇとかって言ってたし。」 「あ！ホントに？貰えるなら助かるー。」 そんな会話を交わしながら、何度目かの挑戦でやっとエンジンがかかる。 「うっし。やっとかかった…姫子、掴まっておけよ？」 「………標準速度でお願いします。」 「へぇへぇ。標準速度ね……但し俺の、だけど？」 ニヤリと口元を上げて、２．３度エンジンをふかすとブィーン。とバイクを走らせる。 「えっ？！ひゃっ…わぁーっ！ちゃっちゃうって！私の標準速度でだぁぁ！！」 姫子の速度だと、夜が明けるっつぅの。 |