*Secret Face ベッドに上がり、自分の膝の間に姫子を座らせ自分は壁に背中を預ける形でテレビを見ていると 脇に置いた携帯が鳴り出す。 ディスプレイ部に表示された番号・・・登録されていない番号だ。 「・・・・・誰だよ。」 そう小さく呟きながら通話ボタンを押し、もしもし?と訝しげに声を出す。 『もしも〜し。俺、原田 慶介。突然ごめんなぁ・・・今大丈夫か?』 「はっ?!なっんでお前が俺の携帯知ってんだよ。」 『ん〜?それはとある情報網から・・・・・ま、んな小さな事はどおでもええねん。』 俺は携帯から聞こえてくる原田の声に、何故か姫子を取られそうな気がして思わず姫子の体を 抱き寄せる。 姫子はそんな俺の行動に驚いたような表情を見せたけど、暫くして、ふっ。と笑うと俺の体に 腕をまわし気持ち良さそうに胸に頭を預けてくる。 「・・・で、何だよ。」 『今日は悪かったなぁ。変な事言うてしもて。』 まったくもってその通りで。お前のその言動でこっちはえらい目に遭ったんだからな。 そう皮肉めいた事を言ってやりたかったけど・・・さすがにやめておいた。 殴ってしまった分、俺の方が分が悪い。 「俺こそ・・・悪ぃ。殴っちまって・・・・・。」 「悪い。」だなんてこれっぽっちも思っちゃいなかったけれど、とりあえずそう口にする。 『ええって、ええって。まぁ常識で考えたら俺が殴られるんもしゃあないもん。ま、あんたに 殴られた痛みより姫に殴られた方がごっつい痛かったけどな。』 「は?姫子が?何で・・・。」 『試合終わってからえっらい剣幕でこっちに来てやなぁ。みんなの前にも関わらず、「嘘付き!!」 言うてボッコ〜ン!!って殴られた。しかもグーでやで?・・・ありゃ効いたわ。お陰であんたに 殴られた上に姫にまで殴られて腫れも倍増やっちゅうねん。ええ顔が台無しやわ。』 電話の向こうで苦笑を漏らす声に、思わずこちらの顔が引きつる。 コイツ・・・原田を殴りに行ってやがったのか。しかもグーで? こっこえぇぇ。 「そっ・・・そりゃご愁傷様で。」 『ほんまやで。でやなぁ、何で電話したかっちゅうとやね。俺が言うた事は全部嘘やっちゅう事 を言いたかったんや。』 「はっ?」 『まぁ、中坊ん時にマジで惚れてたんはホンマやねんけどね。エッチをし損なったっちゅうのも嘘。 彼女と上手く行ってないっちゅうのも嘘。あっ、ちなみに女とはむっちゃラブラブやねんで?』 あっそうですか・・・・・。 『んで、俺が姫ともっかいやり直したいっちゅうのも嘘。なので、ぜ〜んぶ嘘でした。』 「・・・・・何でそんな大嘘をついたんだよ。」 『いやなぁ。藤原 新一ゆうたら高校サッカー界では結構有名やん?俺会うのめっちゃ楽しみやって んて。そやのにやな、第一印象最悪。むっちゃスかしてるし、対応悪いし・・・期待して行った 俺、アホみたいやん。って思ったら何やムカついてきてやね、ちょっと懲らしめてやろうかな。 って思ったわけよ。』 喜んでいいのかムカツク所なのか判断に苦しむ。 とりあえず、表現のしようがないので相手の続きの話に耳を傾ける事にした。 『あんたの弱点突いたろう思うて、俺が考えついたんは姫ネタやった訳よ。姫ネタで突っついて 動揺させた所で俺が点数を入れたろうってね。ま、陽動作戦?』 あ・・・あほらしっ。 こんな作戦の為に俺は姫子を傷つけ、殴られ、落ち込んだって訳か? あはは。っと向こう側でおかしそうに笑うのを聞きながら、バカらしすぎて言葉も出ない。 「バカか、てめぇは。んな事で姫子を使うんじゃねぇよっ!!男らしく正々堂々とサッカーで勝負 しろっつうの。」 『そやし、ごめんって。姫にも同じ事言われたわ。男らしくない!!ってね。』 その言葉を聞きながら俺は胸に寄せられている姫子の頭をそっと撫でると、 一瞬こちらに視線を合わせて微笑みを見せてから再びテレビの画面へと視線を戻す。 『そやかて、俺も散々やってんで?あんたを動揺させよう思って話始めたんはええけどやな、 あんたの反応がおもろぉて調子に乗ったらしゃべり過ぎてしもて、あんたに殴られるは点数は 取られへんは、姫にはグーで殴られておまけに監督にこっぴどくお叱りを受けてやね・・・ ホンマ散々でしたわ。』 「そりゃ自業自得だろ?」 『うはははっ!まぁそう言われれば何も言われへんのやけどね。ま、そういう訳で俺と姫とはもう 何も関係ないんでよろしぃやってぇや。』 「お前に言われなくてもよろしくやってるっつうの!!」 『そりゃそうやろね。今晩辺り激しいんやろうなぁ。なんせ喧嘩の後やもんね、燃えるわな。』 「お前ね・・・。」 ため息まじりにそう呟くも、まぁそうなるだろうな。と苦笑が漏れる。 何てったって初めて喧嘩のようなものをした訳だから・・・いつも以上の事を求めてしまいそうで 思わず姫子の顔を窺ってしまう。 『・・・誤解も解けた所で、お邪魔虫は消えますわ。長々とすんませんね。ほな、さいなら。』 プツンッ・・プープープー。 なっ!!コイツ・・・言いたい事だけ言って切りやがった。 まったく。散々人の事を振り回しといて最後はあっけらかんと、ほな、さいなら。かよ!! ・・・・・ま、とりあえずコイツとは何もないという事で安心はできたけれど。 俺は姫子の体に腕をまわし、強く抱きしめると耳元で囁く。 「なぁ、姫子。仲直りのえっちしよっか。」 「んっ?もぅ、新一はすぐそういう事を言う。」 「何だよ、イヤなのかよ。」 少し不機嫌そうにそう呟くと、イヤじゃないけど。と頬を赤く染めながら姫子が呟く。 その言葉に自然と口元が上がる。姫子の顎に手を当て自分の方に向かせると唇を寄せる。 ――――後、数センチ。の所で邪魔するかのように再び携帯が鳴り出す。 クソッ。何だよ、もう!! ディスプレイを確認すると先程と同じ番号。 俺は一つため息を付き、もしもし?と不機嫌極まりない声を出す。 俺の腕の中でクスクス。と小さく笑う姫子の顔。 ったく、いいとこだったのに・・・。 『あっ、もしもし?何度もごめんなぁ。もしかしていいとこやった?』 「だと思うんだったら電話してくんなっ!!」 『クスクス。悪い悪い。一つ言い忘れた事があってな。言うとこぅ思って。』 「・・・・・何だよ。」 『もし、姫と別れる事があったらいつでも連絡して〜や。俺、いつでも迎えに――――』 ピッ・・プープープー。 話の途中で終了ボタンを押し、ついでに携帯の電源を落とす。 誰が別れるかっ!! 俺は心の中で携帯の向こう側のヤツに悪態をつくと、気を取り直して姫子との仲直りの 時間を楽しむ事にした。 + + Fin + +
<<7万Hit hana様 Special Thanks!!>>
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