*Secret Face 「――――・・いち・・・新一。」 「・・んーーーーっ・・・。」 いつものように、ため息混じりな姫子の声が眠りの奥深くにいた俺の意識を呼び起こす。 「んーーっ、じゃないの。早く起きないと遅刻するでしょ!」 「遅刻・・・・って、今日は・・・日曜じゃねぇの。何で・・・遅刻なんだよ。」 まわらない頭で今日の曜日を確認すると、再び布団の奥に潜り込む。 それを制するように姫子は慌てて俺の体から布団を剥ぎ取ると、ゆさゆさと体を揺らし始める。 「あっ、こらっ!また寝ないの!!今日は夏休み明けの他校との練習試合でしょ?ほ〜ら、早く 起きてってぇ。遅刻すんでっ・・・もぅっ新一?!・・・起きないとチューしちゃうわよ?」 そう言って笑いながら俺に覆いかぶさってくる姫子の体を抱きしめてから方向を変えてベッドに 組み敷く。 「ん〜、姫子のチューは大歓迎!!」 「ひゃっ。もぅ・・・・・そういう時だけ、きっちり起きるのね。」 「クスクス。そうか?」 「新一のえっちぃ。」 「何でチューが『えっちぃ』になんだよ。」 「チューだけならね・・・・・この手は何でしょうか?」 姫子はジト〜〜っとした目で俺を見上げながら、姫子のお腹の上をサワサワと蠢いている俺の手の 甲を摘み上げる。 ちぇっ・・・・・バレたか。 「さて・・・なんでしょう。」 「ダメよ。時間ないんだからっ。早く起きて用意しなくちゃ!!」 「時間ないって・・・まだ2時間半も時間あんじゃん。なぁ・・・我慢できねぇもん。すぐ終わるし? 朝から姫子にチューされそうになったしなぁ。元気になっちゃった。」 「はい?!昨日もめぃっっぱい元気だったじゃない!!もうダメぇ!!!」 「イヤ。」 俺は意地悪く笑って見せると、姫子のぷっくりとした唇に自分の唇を重ねる。 何度重ねても飽きない姫子の唇。 姫子も最初は抵抗を見せてたものの、弱い部分を攻め立てて行くと徐々に甘美な声を聞かせ始める。 こうなったら俺の勝ち。少々口角を上げながらそんな事を思い、自分の舌を姫子の口内に這入り 込ませる。 ・・・・・何言われたって仕方ねぇ。姫子を前にすると抑えらんねぇんだもん。 明るい場所で改めて姫子の白い肌を眺めると、自然と目が行く自分が付けた独占欲の印。 いつもの事ながら・・・結構付けちまったな。 自分の独占欲の強さに苦笑を漏らしながら、紅い痕を指でなぞる。 それでもやっぱり付けてやりたいという衝動に駆られる訳で・・・。 俺は昨日とは違った場所に紅い印を落としながら、唇を姫子の体に這わせ始めた。 「信じられへんっ!!!」 ――――10回目。 学校に向かう道中、ずっと俺に向かって非難の言葉を浴びせる姫子。 野獣だのケダモノだのと・・・・・ま、当たらずとも遠からず? いや、充分自分でもケダモノだとは思うけれど・・・。 姫子以外はそうならないんだから、許して欲しい所なんだけどな。 今まで付き合った女ではこんな自分になるなんて事ありえなかった訳だし。 「あぁ。もぅ、ごめんって。仕方ねぇだろ?姫子を前にすると襲いたくて仕方なくなるんだからさ。」 そう囁きながら姫子の肩を抱き、頬に唇を寄せると真っ赤に頬を染め上げて、バカ新一!!と バンッ!とケツをしばかれた。 「いってぇぇ!!んな、思っきしケツしばく事ねぇだろ?・・・今日の試合に響いたら姫子のせい だかんな。」 「それは自業自得でしょぉ!!これで負けたら罰ゲームね。」 ニヤリと意地悪く笑って見せる姫子の表情。 イヤ〜な予感が頭を過る。まさか、負けたら・・・・・・。 「・・・・・何だよ、罰ゲームってよ。」 一抹の不安を覚えながら、姫子の肩を抱いた手を彼女の頬にまわして軽く摘む。 「1週間エッチなし。」 ・・・やっぱり。そう来ると思った。 何でいつも駆け引きの対象がエッチになるんだよ。そんなに俺ってケダモノか? 1週間なんて耐えられるはずがない――――それこそ本物の野獣になりそうだし・・・・・。 ま、それも勝てばいい話。 「勝ちゃぁいい話だろ?俺をナメんなよ。これでも高校サッカー界ではちったぁ名の知れたFWだぜ? 得点数でも上位なんだからな。」 「分かってるわよ。だからこそ負けたら罰ゲームなんじゃない。私が叩いた事で試合に影響が 出るくらいなら、ねぇ?」 「ほぉ。じゃぁ俺が勝ったら何かご褒美でもくれんの?」 「イヤ。」 「・・・・・即答かよ。」 「大体新一が勝って褒美をねだるって言ったら一個しかないじゃない。」 ・・・・・そりゃそうだ。 納得できる回答に思わず苦笑が漏れる。 ちょっと最近のこの性格、何とか直した方がよさそうか? 言った所で出ちまったこの性格。今更直らないような気がしないでもないが・・・・・。 「・・・今日の試合の相手ってよ、大阪商業高校だったよな?」 「えっ?!あっ・・・うん。」 急に余所余所しくなる姫子の態度。 不思議に思い首を傾げながらもその時はあまり気にも留めなかった。 「絶対勝ってよね。」 イヤに力を込めて言う姫子に、おぅ。任せとけって。と余裕な表情を見せて姫子の頭を くしゃくしゃっと撫でる。 まさか今日の試合の相手高の中に、姫子の昔のヤツがいるなどとこの時点では知る由も無く・・・・・。 勝ったら何をしてもらおうか。と呑気な事を考えている俺がいた。 |