*Secret Face









「ねぇ、今ひとり?暇ならさぁ、俺らと遊びに行かない?」

やだ。まただ・・・・・。

いかにも『遊んでます』って感じの格好だなぁ、この2人。

これで、さっきから3組目。

これって《ナンパ》ってやつだよね?

苦手なんだなぁ、こういの私。早く来てよ、新一。

「彼氏と待ち合わせしてるから。」

「え〜?でも、さっきから見てるけど来そうにないじゃん。来ないんじゃない?そんな ヤローなんてほっといて俺らと遊びに行こうよ。」

はぁ、しつこい!!

や〜っ、腕掴まないでよぉ!!!

私は今日バイト休みなんだけど、新一は用事があって出かけてるから外で待ち合わせなの。

待ち合わせて逢うのなんて初めてだから、すごく嬉しくて張り切って約束時間よりも

少し早く着いちゃったんだけど、待ってる間にこういう状況に3度もあってしまって。

しかも、約束時間なんてとうに過ぎちゃってるのに新一来ないし・・・。

辺りもだんだん薄暗くなってきちゃったし。

「いやっ。ほんとに彼氏と待ち合わせだから!!」

「困った顔もかわいいねぇ。いいじゃん、いいじゃん。遊びに行こうよ。」

「そうそう、俺らと遊んだ方が絶対楽しいって。」

「楽しくない!!もう、来るから。手を離して。」

2人は強引に私を引っ張って行こうとする。

もお、やだぁ。

「お前ら何やってんの?」

私が2人の対応に困っていると、横から不機嫌そうな顔で新一が現れた。

「新一ぃ・・・。」

半泣き状態の私を見て、悪ぃ待たせて。とニコッと笑うと2人に向きあった。

「っげ!!シンじゃねぇか。何、この子お前の女?」

ふっ、と私の腕を掴んだ手が離れる。

私は反射的に新一にしがみついた。だって怖かったんだもん。

新一も片手できゅっと引き寄せてくれた。

へ?シンって・・・この人達新一の知り合い?

「新一の・・・知り合い?」

「ん?そう、中学ん時の連れ。おぉ。お前ら、俺の女に声を掛けるたぁいい度胸してん じゃねぇか。」

「わっ!!知らなかったんだって。だって、すっげぇいい女だったからさぁ。ついつい。」

「ついついじゃねぇよ。半泣きにした落とし前、どうしてくれんだよ。」

新一は学校で見せる冷ややかな表情で、2人に詰め寄る。

「うぇ〜っ!!落とし前って・・・マジ悪かったって。許せよ。」

「あっあ、そうだ。この先に旨いメシ屋があるんだよ。そこおごるからさぁ、それで 許してくれ!!」

何かこの人達、新一に対して低姿勢だなぁって思ってたけど、彼らは新一のお陰で随分 オイシイ思いをしているんだって。(大体想像つくでしょ?)だから頭が上がらない らしいの。・・・後から新一から聞いた話なんだけど。

何やってきたんだか。



「しっかし、この子がシンの女とはなぁ。」

「おぉ。マジ驚き。今までの女もいい女だったけど、今回はその上を行くよな。」

そう口々にしながら、2人はおしぼりで手を拭く。

そこまで言ってもらえる程、自分では『いい女』とは思えないんだけど・・・・・。

今はこの人達が旨いメシ屋と言っていた店に来ている。

・・・って、普通のファミレスじゃん!!

あぁ。でも新一ってどこにいても目立つのね。

店員の女の子達がチラチラと新一見てるし。やっぱりカッコいいもん。

過去の綺麗な彼女かぁ。

知らない訳じゃないけれど、やっぱり聞きたくないなぁ。

「過去の女なんてどうでもいいだろ?もう関係ねぇし。今はコイツだけだから。」

そう言って新一は私の目を見ると微笑んだ。

あ、優しい顔に戻ってる。私の好きな顔。思わず微笑み返しちゃった。

向かい側に座っている2人を見ると、ぽかんと口を開けている。

「何だよお前ら。2人してバカ面しやがって。」

「いや。お前が女に対してそんな表情したの初めて見たもんだから。」

「お、俺も。それ以前にその顔自体初めて見るぞ・・・てか、キモイ。」

「ばっ!!うっせぇ。ほっとけボケ!!」

新一は少し頬を赤く染めると、目の前にあった水をゴクゴクっと飲んだ。

その仕草がすっごくかわいく見えて、思わず笑っちゃった。

「あはははははっ!!シンが赤くなってるよ。うわ〜すげぇ。何、お前マジ惚れ?」

「うひひひっ!!マジ笑える。信じらんねぇ。あのシンがマジ恋なんて。」

お腹を抱えて笑う2人を見て、新一はぶすっとした表情でメニューに視線を落とした。

「もぉ、姫ちゃん最高!!ここまでシンをマジにさせるなんて。」

「そうそう。絶対考えらんなかったんだぜ、シンがマジになるなんて。すげぇよ、姫ちゃん。 でも、捨てないでやってね。マジになったのなんて初めてだから、シンの奴姫ちゃんに 捨てられたら多分立ち直れないだろうから。ぷぷっ。」

「そっそんな。捨てるだなんて。捨てられるなら私の方だと思うから。」

私はぶんぶんっと手を横に振った。

ほんと、私が捨てるだなんて事ありえないよ。

「もぉっお前らくだらねぇ事ばっか話してんじゃねぇよ。それに、人の女を気安く名前で 呼ぶんじゃねぇよ。」

「ぶーーーーーっっ!!!表情の次は独占欲かよ!?勘弁してくれよ。腹痛ぇし、顔痛ぇし もうダメ。俺、笑い死にする。」

「じゃあ、死ねボケ!!」

新一は更に頬を赤くすると、2人を睨みながら照れを隠すように手を挙げて店員を呼ぶ。

そんな新一の姿を見て、2人の笑い声が更に店中に響き渡った。

新一は不機嫌そうだけど、なんか・・・嬉しいな。

本当に私の事、好きでいてくれるんだね。



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