*恋するオモチャ






<ご注意>こちらの作品は、性的描写が含まれております。
       申し訳ございませんが、18歳未満の方、そういった表現が苦手な方は、ご遠慮ください。






チュンチュン・・・チュンチュン・・・。

心地よい朝の日差しと、小鳥のさえずり。

眠たい目を無理矢理こじ開け、ベッドの中で、う〜ん。と大きく伸びをする。

「あぁ。今日から教育実習かぁ・・・。」

私はガバッ。と上半身を起こすと、両手でパチンッ。と頬を叩いて気合を入れる。



私、高峰 いづみ(たかみね いづみ)。只今大学4回生の22歳。

教職免許を取るために、今日から3週間母校の高校で教育実習をする事になってるの。

期待と不安で昨日は中々寝付けなくて、若干の寝不足になりながら教育実習に挑む事になった。

ベッドから飛び起きると、せかせかと身支度を整えて姿見に自分を映す。

「これでおっけぇかな?」

紺色のリクルートスーツを身に纏い、肩まで伸びたストレートの髪を後ろで一つに纏めて、クリップでねじり上げたそれを留める。

今は5月でまだ肌寒いから、スプリングコートを持ってっと。

くるっくるっと体を反転させながら、よしっ。と小さく呟いてマンションを後にした。



私の通っていた高校は女子棟と男子棟に別れていて、言わば女子高と男子高が一つになったような高校だったの。私はもちろん女子棟で学んでいたんだけど・・・。

私は歩きながら通知書を広げて、はぁ。と一つため息が漏れる。

そりゃ、母校と言えば母校での教育実習なんだけど・・・何で配属先が男子棟なわけ?

女子棟から女子大と進んだ私にとって、『男子』には免疫があまりないんですけど。

そりゃっ・・・付き合った事がないわけではないけど。

22年間生きてきた中で、たった一人ですからぁ!・・・残念っ!!。

って、冗談言ってる場合ではないっつうの。

はぁ、どうして配属先を決める時にそういう事を配慮してくれないかなぁ。

何度見ても変わらない『男子棟』の文字を眺めて、再びため息が漏れる。

・・・・・大丈夫かなぁ、私。なめられたりしない?

だって、ただでさえ幼い顔で身長も153cmしかない私なのよ?

今まで一度だって22歳に見られた事ないんだからっ!!

って、威張ってどうすんだって。

あぁ〜。私の希望は女子高の先生なんだけどなぁ。

行くの嫌だなぁ・・・。



なんて事を考えてたら、あっと言う間に学校に着いちゃって。

うわっ。懐かしい・・・ここで3年間過ごしたんだよね。

仲のいい友達と男子棟に忍び込んで、カッコイイ男の子探しに行ったり。きゃぁきゃぁ、わぁわぁ。言いながら楽しくやってたっけ。

ん、まぁ。きゃぁきゃぁ喚くだけで、誰かに告白とかなんて甘酸っぱい思い出はないんだけど。

少し昔の事を思い出して、自然と自分の顔から笑みがこぼれる。

・・・って、感慨にふけってる場合じゃないよね。

「えっと、職員室はっと・・・・・・きゃっ!!」

「おっとっと。」

キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いてたら、階段の踊り場で誰かとぶつかってしまった。

「ごっごめんなさい。よそ見して歩いてたから・・・。」

「びっくりしたぁ。大丈夫だった?・・・って、あれ。見たこと無い顔。」

どうやら生徒の一人にぶつかったらしく、私は目の前に立つ背の高い男子生徒を見上げる。

・・・って、私にしたらみんな背が高いんだけどさ。

「あ、えと。今日から教育実習で来た高峰 いづみって言います。久しぶりに来たから職員室の場所忘れちゃって・・・ごめんね、ぶつかっちゃって。」

「いいよ、俺は全然平気だし・・・へぇ。教育実習生なんだ・・・職員室ならこの階段を上がって右に曲がったとこだよ?」

その子はにっこりと微笑み、階段の上を指差す。

おっ!中々の男前じゃない・・・って、何見てんのよ。私ったら。

私はプルプルっと首を小さく振って、ヨコシマなモノを取っ払う。

「ありがとう。じゃぁ・・・。」

「あ、ねぇ。」

「・・・・・え?」

「教育実習、頑張ってね。」

ぽん。と軽く肩を叩いてから、可愛らしい笑みを浮かべてその子はどこかへ行ってしまった。

頑張ってね――――・・か。んもぅ、俄然頑張っちゃう!・・・・・と、言うより・・

敬語を話せないのかっ、今の高校生は!!

何で私が敬語で、あの子がタメ口なのよ。

んもぅ、今どきの高校生って・・・って言ってる私、おばさんみたい?



「――――・・今日から3週間お世話になります。高峰 いづみです。ヨロシクお願いします。」

朝の職員会議の最中、今回の実習生は私一人らしく、緊張の面持ちで先生方に挨拶をする。

懐かしい顔ぶれもあれば、見た事のない先生もチラホラ。

その中で、私の受け持つクラスの先生がにこやかに挨拶をしてきた。

「やぁ、高峰さん。久し振りだねぇ。お前さんが教師を目指してるなんてねぇ。」

「田辺先生、お久しぶりです。あれ、私が教師目指してるのっておかしいですか?」

高校2年の時に担任だった田辺先生。当時もそこそこお年を召されてたけど・・・今や白髪交じりのおじいちゃんに近い風貌。

笑った顔は昔と変わらず優しいものだけど・・・。

田辺先生、年取ったなぁ。なんて思いながら先生に微笑み返す。

「いんや。おかしくはないけどね・・・高校の時は人前で話すの苦手じゃなかったかね?」

「ん〜。今も苦手は苦手なんですけどね。自分でも何で教師なんてって思いますけど・・・何かいいかなぁって。」

「クスクス。そうかい・・・まぁ、頑張って教師になってね。」

「あ、はい。頑張ります。」

「うちのクラスの生徒は賑やかじゃよ?オモチャにされないように気をつけてね。」

「オモチャって・・・。」

にこやかに恐ろしい事をサラリと言ってくれますね、先生。

田辺先生の言葉に一抹の不安が私の頭を過る。



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