『ごまかすなよ、・・・ちょ、オイっ!!』
俺もそれを追ってみんなの輪に戻ると、
『カオルさん、アンタって人は!』
がぶ〜っ!
ユウジがカオルをすでに噛んでいた・・・。
『今日は迷子じゃないぞ!家出だよ家出!』
『ふぅ〜ん・・・』
『なんだよ〜、ヨウイチぃ。なんか文句あるのかぁ?』
噛まれながらも普通に尋ねるカオルに、『いや、別にないけど。』といつもどおりのテンションで返事をするヨウイチ。
こういう光景に慣れてしまってるのだろうか、ユタカもユウジを止めることなく平然としている。
「コラッ、ユウジ!噛むなと言っとるだろ〜がっ!」
ふわふわの人が俺らの元へやってきて、ユウジのアタマを軽〜く叩いた。
『いでぇっ!』
「まったく・・・困ったもんだ・・・」
ユウジが衝撃にクチを開き、噛むのをやめたのを確認をしてから、ふわふわの人はカウンタへと戻っていった。
「よっし!イイコト考えた!」
突然、ニコニコな人が叫びながらイスから飛び降り、俺らの元へ走ってくるなりカオルを抱き上げた。
『ほよ?』
「カオルくんを人質にして、黒沢さんになんとかフットサルに参加してもらいましょう!」
『は?!』『なんだって?!』『そんなムチャな!』
ヨウイチと俺とユウジは同時に驚きの声を上げた。
その横で、ユタカがニコニコな人の足元でピョンピョン跳ねてじゃれつきながら『うわはっ!何それ!楽しそうじゃん、ご主人様っ〜!!』と大ハシャギ。
「人質、って・・・」
「それを言うなら“犬質(いぬじち)”でしょう・・・」
「そういう問題じゃないですよ、酒井さん・・・」
ニコニコな人以外の人間たちも唖然呆然、カウンターの内外で固まっているようだ。
さてさて、ご主人様たちのフットサルチームと俺たち5匹のフットサルチーム。
一体どうなることやら。
前途多難すぎてアタマ痛くなってきたわ、マジで・・・。
【第5回/終】