Wonder boys/5
「あっ、村上さん!いらっしゃいませ〜!」
ご主人様がカオルの店のドアを開けると、コックさんがいつもと同じ挨拶で迎えてくれた。
カウンターの席には、ふわふわの人とスマートな人とニコニコな人が座っている。
この4人が一緒にいるの、初めて見るよ。
この4人が揃ってる、ということは・・・
『あっ、テツヤだ!いらっしゃい!』
『テツヤさん、お久しぶりです。』
『おお、テツヤさん。お待ちしてましたよ!』
『こんちわ☆』
当然コイツらも揃っているワケで・・・。
ちょっと寒気すら覚える。
当人たちは寒そうなカンジは全くないけどな。
「村上さん、お久しぶりです。」
「もうみなさんお揃いでしたか。遅くなってすいません・・・。」
「いやいや、約束の時間にはまだなってませんし。お気になさらず。」
「さ、さ、村上さん!どうぞ、こちらに☆」
ご主人様は申し訳ないってカンジでペコペコと頭を下げているが、誰ひとり気にしている人はいない。
「さて、みなさんお揃いになったところで・・・早速ご注文をいただきましょうかぁ〜。酒井さんは、アレですね?」
「ええ、アレで。」
ツーカーってカンジで話し合うふたりを、ご主人様が交互に見ている。
「いや、あのですね、俺、毎日昼メシは黒沢さんのお店で食ってるんです。
それでね、曜日で何食うかって決めてるんですよ。ね?」
「そうなんです。だから今日は、ビーフカレーのクリームコロッケトッピングですよね?」
「ちっがいますよ黒沢さ〜ん!今日は、チキンカツ乗せでしょうに!」
「え?あれ?火曜日ってたしかクリームコロ・・・」
「今日月曜ですってば!安岡さんの美容室もお休み、だからこうやってみんな集まってるんでしょうがっ!」
「あ・・・あっ、そうか!そうですよね、今日月曜でしたよねぇ〜。」
えへへと笑っているコックさん。
露骨に呆れた表情を浮かべるご主人様。
他の3人は・・・うん、慣れてるみたいだな。
「えっと、他のみなさんは?」
ニコニコな人はビフカツ、スマートな人は白身魚のムニエルを注文。
ご主人様はメニューとニラメッコした後、エビカツサンド。いつもどおりの軽めのメニューだ。