「あっ、すいません!ヨウイチ、他のお客様にご迷惑になるから、やめなさい!」
「あ、またユタカが誘ったんですね・・・ユタカ、いい加減にしろよ〜!」
飼い主が注意するも、両者必死で耳に入ってないのか、まだしゃかしゃか爪が鳴っている。
『シュートぉっ!』
ユタカの声が響いて約1秒後。
ぐぁしゃ〜ん!!
俺が寝そべっていたすぐそばにあったローテーブルの上の花瓶に、サッカーボールが直撃。
その衝撃で花瓶が倒れ、中の水が・・・まともに俺にかかった・・・
「テツヤくん大丈夫?!」
慌てるスマートな人。
スマートな人も慌てることあんだな〜・・・なんてボトボトのカラダのまま考える。
「・・・ぬぁんぢゃこりゃ〜!」
遠くでご主人様の声。
濡れてツルツルする床に足をとられながら立ち上がる。
見ると・・・
眠気マナコをこすりながら鏡を覗くご主人様の髪型が・・・おそ松くんのイヤミみたいになってる・・・
「村上さん、眠ってらっしゃるから・・・すぐ元に戻しますね〜♪」
ニコニコな人がクスクスクスと笑っている。
さっきのユタカの笑い方そっくりだ・・・
しゃかしゃかしゃか、と俺に近づく爪音。
「あ、水かかっちゃった?ごめんね☆すぐタオル持ってくるから〜♪」
てへっ、と笑って店の奥に走っていくユタカ。
ヨウイチにボールが当たった時と明らかに謝り方が違う・・・
『確信犯か・・・?』
『彼、いたずらっこだからね。』
自問自答していた俺の言葉に答えるヨウイチ。
『テツヤさんのご主人様もやられちゃってたね。
ちなみにウチのご主人様は眠ってる間に“ピッチリ横分け”にされてたよ。
ユウジのご主人様はリーゼント、カオルさんのご主人様は鉄腕アトム、だったかな?』
なんでこの街にはマトモな犬と飼い主がいねぇんだよ・・・
『は〜い!タオル持ってきたよ〜!』
ユタカが引きずってきたタオルを使って、スマートな人が俺のカラダを拭いてくれる。
『ねぇねぇ、今度さぁ、カオルさんとユウジさんも交えてみんなで遊びたいね〜♪』
ユタカは、今度はいい笑顔で俺とヨウイチに熱く語ってくる。
まぁ、いいけどさ・・・それ今の何倍疲れんだよ・・・?
恐ろしくなってきたぞ・・・
【第4回/終】