Wonder boys/4
ただ今、ご主人様と出勤前の準備中。
俺はすでに準備万端。
ご主人様は鏡の中のご主人様と格闘中。
髪型をかっこよく決めているみたいだが、少々不満顔だ。
「そろそろかな・・・」
そんなワケのわかわないひとりごとの後、「よしゃ、行くぞ。」と声を掛けられ立ち上がった。
今日はどこでメシ食うんだろ。
以前は家でメシ食ってたのに、最近はご主人様がいろんな店行きたがるから外食ばっかだ。
最近太ってきてねぇかな。心配だな。
「テツヤ。今日はメシ、後回しな。ごめん。店着いたら俺がうまいメシ作ってやるから我慢しろな。」
店でメシ食うと、酒のアテみてぇのしか出してくんないから、正直ちょっと嫌なんだけど。
「ここ、かな?」
ご主人様が立ち止まる。
俺も同じように立ち止まって、見上げる。
“Hair salon LEONE”
『・・・へあー さろん・・・れおーね?』
美容室か。
小奇麗でお洒落な雰囲気の店で、店内には人間の若い女性客と男性客が“トリミング”してもらっている。
ご主人様が店の様子を伺っていると、腰にカフェエプロンを巻いた若い女性の“トリマー”が出てきた。
「初めてのお客様ですか?どうぞ、お入りください。」
・・・ご主人様の好きなタイプ、しかもド真ん中の文句なしストライクだ・・・。
「あっ、はっ、はい!・・・あ、ちょっとコイツ繋ぐんで・・・」
リードを繋ぐ場所をきょろきょろと探すご主人様。
「あ、一緒に店内へどうぞ?中にもウチの店の看板犬がいるんで。」
「あ、そうっすか。じゃあ、お言葉に甘えて・・・」
ストライクトリマーに案内され、リードに繋がれたまま店内へ入った。
「いらっしゃいませ〜♪」
ストライクトリマーが挨拶すると、中にいたトリマー全員が声を揃えて「いらっしゃいませ〜♪」と合唱した。