Wonder boys/3
ゴソゴソと何かが動く気配・・・ご主人様、出掛ける準備してるな。
ふぁ〜ぁ・・・眠いけどオレもそろそろ起きなきゃ。
お気に入りのクッションを踏み締め、グッと立ち上がると、早速ご主人様から声が掛かった。
「お。起きたかテツヤ。今日は外でメシ食うからな。」
出た・・・またカオルの店か・・・
あいつも変だし、客も変だし、肉以外にいい思い出ねぇなぁ。
ご主人様にリードをつけてもらって家を出た。
暴投コーギーはどっかで迷子になってる可能性があるからまぁいいとして、あの噛むレトリバーは恐ぇなぁ・・・
自然と重くなる足取り。重い頭。下がる尻尾。
『ん?』
気づくとカオルの店の前を通り過ぎていた。
よしっ、今日は噛まれなくて済むな。よかった。ホントよかった。
「今日はココ。入るぞ、テツヤ。」
店の看板を見上げる。
“Dog Cafe t.4.2”
何だよ、このファンシーな外観は・・・
そもそもこの店名、何て読むんだよ?意味わかんねぇんだけど。
よっぽどひねくれたヤツが名付けたんじゃね?
自動ドアがうぃーんと開く。
「いらっしゃいませ。」
うっわ〜・・・人間も犬もメスだらけ。
うれしい反面、人間のメスの香水とやらが、やたらとクセぇ。
「こちらへどうぞ。」
「あ。はぁ・・・。」
ご主人様もオレもめっちゃ注目浴びてる・・・。
緊張するなぁ。ご主人様もいつもより動きが固い気がする。