そして俺たちの前にもやってきた。
「はい、テツヤくん、ユウジくん。お肉だよ〜。いつもカオルと仲良くしてくれてありがとうね〜。」
『お、さんきゅ。』
『おっ、今日も出ましたな。』
『オレのはないのか・・・』
『カオルさん、昼飯は?』
『ん〜と〜・・・・・・・・・ついさっき食べたよ。』
『ついさっきかよ!』
いきなりユウジがガブ〜っとカオルの肩ロースの辺りを噛んだ。
『うわ、噛んだ!』
オレは目の前で展開されている光景にただただ唖然とするばかり・・・だったが。
『お前噛まれてんのに何ヘラヘラ笑ってんだよ!?』
『え〜?だってオレこんなカラダだし噛まれても牙刺さんないからあんまり痛くないんだよね〜。』
『そういう問題か!?』
「あっ!こらユウジ!また噛んどるのかお前は!」
ふわふわの人がユウジの頭を軽くペシっと叩いた。
『いったぁっ!』
叩かれた衝撃でユウジはやっと噛むのをやめた。
「黒沢さんすいません!また噛んじゃいましたウチのヤツ・・・」
ペコペコ頭を下げて謝るふわふわの人。
「ははは!いいですよ〜、カオル、喜んでますし〜。」
そういう問題か!?
『なぁ、ユウジ。いくらこんなヤツだからといって噛むこたねぇだろ。』
『む〜。こんなヤツって何だよ〜?』
『なんつ〜か、突っ込まずにはおれんのですよ、カオルさんといると。』
『ツッコミかよ・・・』
『オレ、突っ込まれるような要素これっぽっちもないんだけどなぁ。』
『そういうところだっつうの!』
またユウジがカオルのもも肉の辺りをガブ〜っと噛んだ。
「だから噛むなっつってんだろ!」
ふわふわの人がまた頭をペシっと叩く。
「はっはっは!仲いいなぁ!」
『笑い事かよ、コック!』
あ、つい呼び捨てしちまったよ。
「村上さんはこの店よく来られるんですか?」
「いや、この前レコード屋のとこでカオルくんが道に迷っていたみたいでね、ここに連れて帰ってきてあげたんですよ。」
「村上さんもですか?!いやぁ、俺もね、ユウジと川の土手を散歩してたらカオルくんが足にじゃれてきてね。
周り見渡しても飼い主らしき姿は見えないし、ず〜っとついて来るから『まっ、いっか』ってしばらく放っておいたんすよ。
そしたら街角の掲示板に『迷子犬』の貼り紙があってね、ここまで送り届けてあげたんですよ〜。」
「はぁ・・・」
「もう、カオルはねぇ、リード外して、ちょっと目を離すといなくなっちゃって困ってるんだよねぇ〜。」
「はぁ・・・」
そんなに困ってるように見えませんけど?
『オレも迷子になって友達増やしてみっかな?』
『そんなんマネせんでよし!』
ユウジがガブ〜っと俺のバラ肉辺りに噛み付いた。
『いでででで!ちょ、俺、直 “身”なんだから痛いっつの!牙刺さってるっつの!』
「ユウジ!こらっ!噛むなっつっとるだろうがっ!」
「テツヤっ!大丈夫かぁっ?!」
「ははは、テツヤくんとユウジくんも会ったばかりなのにすっかり仲良くなっちゃって〜。」
今日も友達ができた、らしい。
しかしオレにまともな友達はまだいない・・・。
【第2回/終】