「そろそろお時間です。この衣装に着替えてください。」
「い、衣装・・・?!」
ユウジが男性に聞き返した。
「当たり前じゃないですか。私服で歌うんですか?じゃ、よろしくお願いしま〜す」
男性はそう言い残し、部屋を後にした。
ドアがガチャリと開き、テツヤが戻ってきた。
「うへ〜!厠へ行くのも一苦労だったぜ。」
「おかえり〜。」
「さっき男の人が来て、『これに着替えてください』って。」
ヨウイチがテツヤに衣装の入ったスーツカバーを手渡した。
「は?着替えて何すんの?」
「さぁ。」
5人はワケもわからぬまま用意されたスーツに着替え始めた。
ビーーーーーーー。
『本日は○○大学学園祭、ゴスペラーズライブにお越しいただき、ありがとうございます。
公演に先立ちましていくつかの注意事項がございます・・・』
「え?」
「学園祭?」
「ゴスペラーズ?」
「ライブ?」
「何それ?」
コンコン。
「は〜い。」
先ほどの男性がドアを開け、5人に声を掛けた。
「スタンバイ、お願いしま〜す!こっちです。」
「・・・はぁ」
5人は男性の案内で部屋を後にした。
暗いステージ裏。
ヨウイチが口を開いた。
「もしかしてさぁ、僕たちがその『ゴスペラーズ』っていうのになってんじゃないの・・・?」
「はぁ〜〜〜?!」
大声で驚く4人。
「だってさ、周り見渡しても演者らしき人間いないし、この衣装だってお揃いだし。」
「え、でも、待って!ステージ出て何するの?歌?芝居?コント?」
「・・・さぁ〜、そこまでは・・・」
大音響で曲の演奏が始まる。
客席から大きな歓声が上がった。
「え〜!どうすんの?!」
「仕方ねぇ、出るしかないだろ!」
テツヤが先頭になり、5人がステージに走り出ると、歓声はさらに大きくなり、手拍子が巻き起こる。
『♪5人の侍 俺達がゴスペラーズ』
何故だか自然に歌うことができている5人。
カラダがリズムに乗り出したその時。
くるくるくるくるくるくる、しゅたっ。
ヨウイチがターンを決めた。
湧き上がる歓声。
黄色い声援が飛ぶ。
“叶ったってそれかよ!”と思う4人と、ちょっと満足気な当の本人であった。
おわり。
そしてオマケ。
【その日のMC】
テツヤ「そう言えば、『ポートピア連続殺人事件』の犯人って「ヤス」なんだよな。」
ユタカ「へぇっ?!」
ユウジ「最後のシーンで
ボス『なにか
とれ』
ヤス『なにを
とりますか?』
ボス『ふく』・・・ってやるとヤスが白状するんですよね。」
カオル「じゃあとりあえず、今からヤスの服脱がしましょうかね」
大笑いしながらユタカを羽交い絞めにするヨウイチ。
5人の会話の意味がわからず、置いてけぼりの客席。
以上。