しばれる冬のおはなし
むかしむかし。
本州の北の方の国に、ひとりのジイサンがいました。
雪深い地域で農作物が育ちにくい地域らしく、若干貧しめなカンジでした。
健康管理に気を遣っていることもあり、慎ましやかな生活を送っていました。(しかし茶飲み友達はたくさんいる)
ジイサンはある冬の日、通帳を見てため息をついていました。
正月を越すのも微妙なほどの残高しかなかったからです。
「これじゃ年末年始の玄米が買えないな・・・どうやってやりくりしようかな・・・ない袖は振れないな・・・」
ジイサンは、ものすっごいエエ声で呟きました。
そしてアタマのコンピューターを瞬時に駆使して、稲刈りした後のワラを使って笠(かさ)を編んで売る、という解答をはじき出しました。
家にあるワラをかき集めると、ジイサンは驚異の集中力を見せ、不眠不休で一気に笠を編み終えました。
「さて、早速町に売りに行くとするか。」
ジイサンは質素な家を後にし、風雪が吹き荒(すさ)む中を歩き始めました。
やっと到着した町のフリマの片隅で、ジイサンは笠を出店しました。
「♪笠〜、笠〜、笠いかがっすか〜」
見事な低音でCMソングを歌いましたが、数時間待っても笠は全く売れません。
とうに日が暮れて、辺りはすっかり暗くなってます。(冬は日が短いしね、仕方ないよね)
「・・・・・・・・・」
あまりの売れなさっぷりに、ジイサン茫然自失状態でした。
紫色になったクチビルが町行く人々の涙を誘いました。が、それでも売れません。
「・・・凍死する前に帰ろうか・・・」
ジイサンは笠を担ぎ直し、元来た道を帰っていきます。
「♪ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜、僕マラド〜ぉ〜ナ〜」
ジイサンの低音にピッタリな哀愁漂う歌でしたが、歌詞はうろ覚えでした。
「♪ドナドナマラ〜ド〜ナ〜、神の手ゴール〜・・・ん?」
うろ覚えのまま歌いながら歩いていると、道端にお地蔵さんが4体佇んでいるのを発見しました。
お地蔵さんの頭には、「これにカラフルなシロップをかけたらかき氷になるんじゃね?」ってなほどに雪が積もっています。
微動だにせず(←当たり前)、吹雪の中を立ちつくすお地蔵さんがなんだかとっても寒そうでかわいそうに思えました。