時代の寵児?
時は室町。
南北朝が統一され戦乱がまだ覚めやらぬその時代、たくさんの寺院が軒を列ねる京の街の片隅に1軒の有名な寺があった。
住職の名前は涙香和尚。
別名「裸念仏」と呼ばれ、京の娘たちの心を鷲掴みしていた。
そんな和尚の元へ、ひとりの少年が預けられた。
噂によるとこの少年、俗に言う「ええトコの子」らしいのだが、退っ引きならない事情があるらしく、仏門の扉を叩くことになったようだ。
少年はそのことに関し、悲観的になることはなかった。
何故なら和尚が「はぁ?スキンヘッド?やってられっかよ、んなの。」と髪を肩まで伸ばしていて、少年もマルコメくんになることを免れたからだった。
時々ホームシックになっては、寺の軒に飾られたてるてる坊主を見上げ、突き抜けるハイトーンで「♪母上さま〜〜」と歌っている姿が目撃されていたが、それ以外の時は寺での生活を心から楽しんでいた。
特にお経の練習は、和尚から初めて発声の仕方を教わった時「うん、筋いいんじゃね?」と褒められたこともあり、大好きなのだそうだ。
たまにお経の一部をすこ〜んと忘れ、和尚に「またかよ!」と突っ込まれることもしばしばだが、少年は「人間なんだから、生きてるうちはミスのひとつやふたつぐらいあるよ〜」などと、すでに悟りを開ききったような返答をしていた。
時々うっかりミスもあるものの、勉学の片手間に独身貴族である和尚の身の回りの世話もそつなくこなした。
特に少年が作る食事は絶品で、和尚も大喜び。
油断すると黄色いスパイシーな味噌汁の登場頻度が高くなるのが和尚の悩みの種なのだが。