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ある王さまのおはなし

 

 

むかしむかし。
ある大きな大きな国の真ん中にそびえ立つ、大きな大きなお城に、ひとりの王様が住んでいました。

王様といっても、亀屋万年堂の名菓「ナボナ」のCMでおなじみの「世界のホームラン王」ではなく、ディープ・パープルを直訳して歌っているミュージシャンでもありません。
まま、おとぎ話に出てくるような、ああいうようなよくあるカンジの、ごくごくベーシックな王様だと思ってください。

さて、話は戻ってこの王様。
実はすえ恐ろしいまでの負けず嫌いな性格が特徴でした。(見た目の特徴は挙げ出せばキリがない)
それにジャイアニズム(「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」的発想)が非常に強く、人が食べようと楽しみに取っておいた焼肉やドーナツを何の躊躇いもなく食っちゃうような、そういうガッツキグセが見られました。(もう目も当てられない)

さてさて、そんな或る晴れた日のこと。
王様の前にふたりの機織(はたお)り職人が謁見しにやってきました。

「いやぁ、どうもどうも〜!ご機嫌麗しゅう〜!」
職人の片割れは、ニコニコといかにも調子のいいカンジで、高い身長を折り曲げヘコヘコとアタマを下げました。

「お初にお目にかかります。わたくしどもは、旅をしながら世にも珍しい織物や服を売るのを生業にしております。以後、お見知り置きを。」
もう片方の職人は、低くてごっつええ声で淡々と、そして礼儀正しく挨拶をしました。

「ふぅん・・・で?俺に何の用だよ?」
「実は、今日は王様だけに特別に見ていただきたいお洋服があるのです。よろしいでしょうか?」
「ふぅん・・・」

興味なさげ〜な王様をよそに、ふたりは早速準備に取りかかりました。

「じゃ〜ん!はい、こちら!ど〜ですかお客さん!(猪木のマネ)あ、失礼っ・・・ど〜ですか王様っ!」
「・・・・・・はぁ?」

王様がひとことで片づけてしまったのもムリありません。
なぜなら、ふたりが差し出した両手には何も載ってなかったからです。

「何もねぇじゃん。『ど〜ですかお客さん!(猪木のマネ)』って・・・何寝ぼけたこと言ってんの?」

呆れ返る王様を気にする様子もなく、機織り職人はなおも続けます。

「こちらは、世にも珍しい『クオリティの高い人間にしか見えない不思議な服』でございます。」
「・・・『クオリティの高い人間にしか見えない』、だぁ?」

王様はサングラスをズリ上げてふたりの手元を凝視しましたが、やっぱり何も見えません。
「クオリティ高い俺に見えないってことはあり得ない。コイツら絶対ウソついてやがる。」と王様は思いました。


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