「俺、村上哲也。お前は?」
「黒沢カオル・・・です・・・」
その後、村上くんに軍人将棋の素晴らしさについて長々と聞かされた。
「(略)・・・って寝るな!人が一生懸命説明してやってるのによぉ!」
扇子でおでこをパシッとたたかれた。
・・・マジ帰りたい・・・
「お!軍人将棋じゃないか!」
後ろからオジサンの声。
振り返ると・・・
「さ、酒井名人?!」
「げ!マジかよ!」
『やりたいやりたい!』
ボクと村上くんの驚きをよそに、酒井名人は目をキラキラさせて盤と駒を見ている。
「いやぁ、懐かしいな!私はその昔、“軍人将棋のユウたん”って呼ばれてたんだよ!」
「碁打ってる時とキャラ違いすぎじゃねぇか・・・?」
「君が軍人将棋打つのかい?相手してくれるかい?」
「え・・・」
さすがの村上くんも、相手が酒井名人ってことで顔が引きつっている。
「頼むよ〜。やろうよ〜。ねっ?ねっ?」
酒井名人、テンション上がりまくりだ・・・
「はぁ・・・わかりました・・・」
仕方なく受けてたつ村上くん。
ボクは横からゲーム観戦だ。
“おかめはちもく”ってやつだな。・・・ちょっと違うけど。
着物対ハカマ・・・
陽一もいるし、ここは今何時代ですかと聞きたくなる。
それにしても・・・この軍人将棋ってやつ・・・かなりおもしろいんですけど〜!?
「父さん何やってるの・・・って、え!将棋!?」
「あぁ、ユタカか。」
「あ!ユタカぁ?!」
「ユタカくんだ!」
ユタカくんはボクたちの顔を順番に見てビックリしている。
「あれ?みんな知り合いなの?」
「ううん、今日初めて会ったんだ〜。」
ボクはユタカくんの質問に答えた。
「父さん・・・よりによって なんで将棋やってるの?」
「これは将棋じゃなくて軍人将棋だ。」
「軍人将棋?」
「まぁ見てなさい。すっごいおもしろいんだからっ!」
パチン!
「うぉ〜、俺のタンクがぁ〜っ!」
「はっはっは!まだまだ若い者には負け〜ん!」
頭を抱える村上くん。
一方の酒井名人は高笑いだ。
「よし、俺もバトルを仕掛けるぜ!行け!」
パチン!
「ぬぉっ!俺のスパイがやられたぁ!」
「酒井名人、油断しましたね。」
してやったりの村上くん。
「それ終わったら次ボクにもやらせてね!」
ボクは村上くんと酒井名人に言った。
「ボクもやりたい!」
ユタカくんも軍人将棋にハマりつつあるようだ。
「お前は囲碁でも打っとけよ!」
村上くんがムッとした顔でユタカくんに言った。
「こらっ、ウチの息子になんちゅ〜こと言うのだ君は!」
「あ・・・すいません・・・」
村上くんはペコペコと頭を下げた。
『んもぅ!頼む!誰でもいいから私の囲碁の相手して〜〜!!』
陽一の叫び声はボクのカラダの中でむなしくひびき渡った。
●○完○●