「ところで、オーガ様はいろんなものに姿を変えることができると伺いました。それはホントですか?」
「おお、当たり前だ。俺の辞書に不可能という文字はない。」
オーガはそう言って、大きな大きなライオンに変身してみせました。
「おおっ!これはすばらしい!では、ネズミのような小さなものにも変身できるのですか?」
「さっきも言っただろう、不可能はない。」
今度は小さな小さなネズミへと姿を変えました。
猫はそれを素早く捕えると、パクッと口の中へほうり込んでしまいました。
「今、肉食べないようにしてたんだけど。ま、いっか。」
城主がいなくなった城から外へ飛び出した猫は、こちらへ向かってくる一行に呼びかけました。
「この先、目的地周辺です。音声案内を終了します。・・・はい、こちらがゴス侯爵の住まいでございます!どうぞ、お立ち寄りください!」
「へぇ〜、ここが侯爵のお城?豪華だねぇ〜。」
王様が感心するのも当たり前です。
だってオーガが人々から強引に巻き上げた金銀財宝で私腹を肥やしていたのですから、お城はキンピカなのです。
「はぁ、まぁ、そ、そうっすね・・・」
三男も驚くわな、そりゃあ。
猫から何の事情も聞いてなかったんですもの。
三男に段取りを先に言ってしまうと、ぎこちない演技でバレるかもしれない、という猫の計算もあったようですけどね。
てなワケで、トントン拍子で「ゴス侯爵」という人物になった三男は、その後 友愛政治で領地を統治し、領地に住む人々とともに末代まで幸せに暮らしましたとさ。
おしまい。
【オマケ】
「そういえば、兄さんたち元気でやってんのかな・・・。」
城内のきらびやかな食堂で猫と食事をしていたゴス侯爵(元:三男)がぽつりと呟きました。
「あ、一番上のお兄さまは、カレー屋さんを各地に開いてチェーン展開してるようですよ?
去年のレトルトカレーの売り上げは通販売り上げナンバーワンだったようです。」
猫のくせにマクロビオティック的な料理を食べながら答えました。
猫のくせに情報を集めるアンテナは高精度のようです。
「へぇ〜、さすがだなぁ。兄さんの作るカレーうまかったしな。」
「2番目のお兄さまは、ロバタクシーで成功されましたよ。」
「マジか。」
「えぇ。ロバタクシーで得た資金でさらに馬タクシーを並行して事業展開したようです。
その後はロバや馬のレンタル事業も成功を収め、現在では人材派遣事業にも手を広げているようです。」
「マジメか!スタートはあんなカンジだったのに、マジメか!」
そんなこんなで、兄の商才にすっかり感心したゴス侯爵は、長男を料理人、次男を参謀として城に呼び寄せました。
過去のわだかまりが消えた3兄弟は、末永く仲よく暮らしました。
ちなみに王様とも引き続き友好関係が続いているようです。
そんな3兄弟の口ぐせは、
「俺まだウサギ一度も食ったことないぞ?」
でしたとさ。
おしまい。