A Chaser & Runaways
≪Episode 2:追跡者の復讐≫
「じゃ俺ら仕事行ってくるから・・・、お前ら、おとなしくしてるんだぞ・・・?」
酒井はリビングで我がもの顔で寝そべっているてつやと、部屋の壁に開いた(いや、正確には“開けられた”)小さな穴に棲むカオルとユタカに声を掛けた。
毎日同じセリフを残し部屋を後にしているのだが、半日後に帰宅すると、部屋はそれはそれはひどい有り様で。
部屋を片付けるのを後回しにして3匹の後を追っかけ回すのが、北山が同居し始めてからの酒井の日課と化していた。
「返事ないし・・・。行ってくる・・・。」
酒井は大きなため息を残し、北山と共に部屋を後にした。
バタンと閉じられたドアの音を合図に、てつやが行動を開始した。
『今日こそは2匹とも食ってやるからな。』
来(きた)るべきチャンスに備え、てつやはタンスに爪を立て研ぎ始めた。
『あのトロい方を先に片付けてその摂取したカロリーですばしっこい方を捕まえるのかぁ〜、それとも先にすばしっこい方を食って余力でトロい方を捕まえるのかはぁ〜・・・自由だぁ〜!』
てつやは猫なのに犬井ヒロシのようにガッツポーズをとった。(サングラス着用)
そんなてつやのひとりごとが、動物である2匹のネズミの耳に聞こえないワケはなく。
『今の聞いた?』
カオルがパンスト(ネズミS〜Mサイズ)でシュッシュッと靴磨きしながらユタカに言った。
『聞こえたも何も・・・あんなに大声で作戦バラしてどうするんだろうね・・・』
ユタカが雑誌(『ネンズ・ノンノ』)を読みながら返事する。
しかし。
2匹に聞こえるように言っているのは、飽く迄もてつやの作戦に過ぎなかった。