『そんなつまんねぇやりとりしてる場合じゃねぇんだよ!』
てつやはカオルを掴んだ。
『あ〜れ〜!やめてくださいまし〜!』
手の中でジタバタするも、がっちりと掴まれているためてつやの手はビクともしない。
『ユタカぁ〜、さっきは忠告を聞かなくてすまなかった。今度腹いっぱいウニ食わせてやるから、な?助けてくれよぉ〜。』
『ホントに?!』
『ホントにホント!』
『じゃあこの契約書にハンコください。』
ユタカはてつやのカラダを登り、握られたカオルの元に駆け寄った。
『商談成立。』
カオルはユタカの用意した契約書にペタンと手を押しつけた。
契約書にはカオルの黄色い手形が残っている。
『俺のカラダで許可なく商談してんじゃねぇよ!』
てつやは自分の手首の上に乗ったユタカに食いついた。
しかし、ユタカはカオルの頭上にタイミングよく飛び退き、てつやは自分の手首を目一杯噛んでしまう。
『ぐわぁ!痛ぇ〜っ!』
『うわぁ〜!』
てつやは痛さのあまり手をブンブン振り、握っていたカオルと、カオルにしがみついていたユタカを床に叩きつけた。
『いてててて・・・尾底骨強打しちゃったよ・・・お前さぁ、いくら何でも俺の頭の上に乗ってくることないんじゃない?』
『いったぁ〜・・・助けてあげたんだから文句言わないでよ〜!』
『とりあえずあいつも痛がってるみたいだし、その間にカレー洗い流そうっと。』
カオルとユタカは流し台に上がった。
ひとまず停戦状態に入った猫とネズミ。
その頃、人間のふたりはというと、酒井は破れて穴だらけのシーツに包まってふて寝、北山は散らかった部屋を片付けていた。
「雄二〜。怒んないでよ〜。ほらっ。ちゃんと片付けてあげてるじゃん。」
「これは悪夢だ・・・お前が来た時に感じた悪寒はこれだったんだ・・・お前がウチに来るとロクなことない!」
「まぁまぁ、あの女の子が飽きていなくなったら帰るからさ〜。機嫌直してよ。」
「あのネズミ連れてとっとと帰れ!」
「冷たいなぁ、雄二く〜ん。しばらく住まわせてもらうからね〜。」
「んもぅ・・・知るかっ!」
さてさて、人間ふたりと3匹の生活、一体どうなることやら・・・
つづく?