A Chaser & Runaways
≪Episode 1:逃亡者の逆襲≫
午後9時。
酒井は部屋でのんびり雑誌に目を通していた。
その横で大きな猫が1匹、警戒心なく腹を上に向け豪快に眠っている。
そんな静かな部屋に携帯の着信音が鳴り響いた。
「お?誰だ?」
『ちっ、気持ちよく寝てたのに起こしやがって・・・どこのどいつだよ?』
携帯のディスプレイが発信元を表示していた。
“着信 北山”
「お〜、ホクさん。どうした?」
「ねぇ、今、家?」
「あぁ、そうだが?」
「今雄二の家の近くまで来てるんだよね。行っていい?」
「あぁ。どうぞどうぞ。」
ピンポーン。
「早っ!」
「開けて☆」
「・・・わかった。切るぞ。」
酒井は携帯をパタンと閉じてテーブルの上に置くと、玄関に向かい北山を部屋に招き入れた。
「やぁ。ごめんごめん。」
「・・・その爽やかな笑顔を浮かべる時は何かある時だ・・・嫌な予感がする・・・」
酒井は背中に走る悪寒に身震いした。
「嫌だなぁ、雄二くん。そんな言い方しないでよぉ〜。」
「お前こそそんな言い方すんな!気持ち悪いっ!」
「部屋、上がるよ〜。お邪魔しま〜す。」
北山は酒井を玄関に残し、部屋の奥にさっさと入って行ってしまった。
「おいっ!聞いてるのかキサマっ!」
「うん、聞いてる聞いてる。・・・あ、てっちゃん。久しぶりだね。」
北山は、酒井の飼い猫「てつや」の頭を撫でた。
『おぅ。いらっしゃい。久しぶりだな。』