浜辺のカレ
むかしむかし。
海沿いのカーブを白いクーペで曲がった辺りに、ふたつの夏をひとりきりで過ごしていた男が住んでいました。
男はパーマをかけた長い髪を後ろでひとつに束ねています。
(余談ですが、大阪では「パーマ」を「あてる」と言います。)
たぶん無職なのでしょう、毎日仕事もせず、1日の大半をゲームなどをして遊んで暮らしていました。
「今日は魚が食いたい気分だから、釣りでも行くとするか。」
腰に蓑的なものをつけ、竿を持ち、海へ向かいます。
気分はすっかり「釣りバカ日誌」の「はまちゃん」でしたが、残念ながら男には現在「合体」する相手はいませんでした。
(なんせ、ふたつの夏をひとりきりで過ごしていたからね。)
「♪い〜つでも僕らは笑う〜、この海のこ〜とを〜」
と鼻歌歌いながら浜辺を歩いていると、1匹の亀がふたりの子供にいじめられていました。
「なんか・・・カレーくさくない・・・?」
「仕方ないだろぉ〜、さっきカレー食べたんだもん。」
「ホントだ、すごいカレーのニオイする!それに甲羅がメロンみたい!」
「え〜、そんなことないよぉ〜!けどメロンもらえたらうれしいよねぇ〜。」
・・・ちょっと会話が噛み合ってない様子でしたが、いじられまくりな亀が若干不憫に思えた男は、止めに入りました。
「こらこらお前ら。その辺でやめてやんなさい。」
「え?何で?普通にしゃべってただけなのに。」
「わかった!ポンガメさんのことがうらやましかったんでしょ〜?!」
「ちゃ、ちゃうわぃ!何で俺がうらやましがらないといけないんだ?!」
「あ。何か図星だったっぽいね。」
男は、真ん中よりちょいM寄りでした。
だから「いじってほしいオーラ」が自然とムンムン出ていたのかもしれません。
「も、もうすぐ晩メシの時間だろう?ガキはさっさと家に帰りなさいっ。」
「仕方ない・・・ヤス、帰ろ?」
「そだね、きたやまさん帰ろ帰ろ。んじゃまたね、ポンガメさん!」
「気をつけて帰れよぉ〜。」
亀は立ち上がり、二足歩行でふたりに手を振りました。