☆真夜中のダンディー
ここは夜の繁華街。
安岡はほしい本を探すべく、仕事帰りに閉店間際の大型書店に立ち寄った。
売場面積が広すぎて、どこにどんな本があるか検討もつかない。
店員に尋ねながらなんとか目的の場所に到達した。
“・・・あっ、たぁ〜♪”
心の中で小踊りした後、嬉々としてそれを手に取り、レジへ向かう。
退店を促すように流れ始めた「蛍の光」に急かされながら、精算を済まして店を後にした。
「あ、あれ?」
その書店が入っているショッピングセンターから、直接地下鉄の改札へとつながる階段とエスカレーターがあったのだが、現在この建物の改装で閉鎖されていた。
安全第一のヘルメットをかぶった坊やのイラストとともに、『現在閉鎖中につき、他の出入口をご利用くださいませ。』と書かれているが、不親切にも他の出入口の案内はされていない。
はぁっ、とため息をつき、ひとまずショッピングセンターから出ることにした。
閉鎖された出入口しか知らなかった安岡は、当てずっぽうで街を彷徨った。
グデングデンになりながら肩を組んで歩くサラリーマンのグループや、こんな時間だというのに我がもの顔で闊歩する未成年者や、「お兄さ〜ん、いい娘いますよ〜?」と声をかけてくるキャッチの男なんかが道を占拠していて、非常に歩きづらい。
「・・・うざっ・・・」
誰にも聞こえないように小さく呟いて、横道へ逃れた。