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「お前っ!ふざけんなよ!お前のせいでタミさんがっ・・・!」
「自首するようにって説得してくれてたのに!自殺を止めようとしてくれた人になんてことするんだよ・・・っ!」

村上がホシの胸倉を掴みイスから引き立たせ、安岡もホシに詰め寄った。

「村上も安岡もやめとけ!」「気持ちはわかるが、少し落ち着くんだ!」
ヒートアップしたふたりを、他の捜査員が総出で必死に食い止めている。

俺は取調室に取り付けられたマジックミラーからその様子を見ていた俺も、思わず中へと飛び込んだ。

「ふたりともやめろ!そんなことをしても、タミさんは喜ばんぞ!」

俺のコトバに、ふたりの動きが止まる。

「酒井・・・」
「仏のタミさんはいつだってやさしく説得してたじゃないか。タミさんにさんざん世話になったお前たちがそれを見習わんでどうする?」
「酒井さん・・・」
「・・・鑑識課のくせに出すぎたマネをしてしまってすまない・・・。俺はもう少し洗い直して証拠を固めるつもりだ。あとは頼んだぞ。」

 

取調室から鑑識課へ戻る最中、特命係のふたりと出会った。

「今回はお手柄だったようですね。」

警部が俺に声をかけてきた。

「いやいや、偶然証拠が見つかったってだけで・・・警部のように推理を働かせて解決したワケではありません。お恥ずかしい・・・」
「またまたぁ!謙遜しちゃって〜!」
「鑑識課ならではの観点での事件解決。素晴らしいじゃありませんか。」

たくさんの難解な事件を解決している特命係に誉めちぎられて、俺は思わず苦笑いを浮かべた。

「俺は・・・ただ単に世話になったタミさんの死の真実を知りたかっただけです。
捜一のふたりの悔しそうな様子を見て、俺も非力ながらチカラになれたら、って思いましてね。」
「そうでしたか。」
「ええ。」
「さ〜かいっ、はい!」

警部と話していると、横から黒沢さんが俺の目の前にタミさんの猫を突き出した。

「おっ?!どうしておふたりがこの猫を?」
「鑑識課のみなさんは他の事件で外へ出られましたよ。」
「で、猫の世話は、ヒマな課に回ってきたってワケ!」
「そうだったんですか・・・。すいませんが、俺も今からその次の現場に向かいますんで、もう少しコイツの面倒見てくれませんか?」

ふたりに猫を頼んで立ち去ろうとすると、警部に「酒井さん。」と呼び止められた。

「はい?」
「今すぐこの猫の爪、よ〜く調べてみてはいかがですか?」
「え?」
「タミさんの事件の証拠、早く固めた方がいいんじゃないかなぁ?」
「!?・・・マジですか?」

俺は黒沢さんの腕から猫を受け取り、猫の手を見た。
細かい黒い物質と血液のようなものがついている。

「ありがとうございます!」
「俺たちもタミさんにはよく世話になったんだよ。捜一にいながら特命係にも友好的に接してくれた人だった。
だから、酒井。後は頼んだぞっ!」
「まかせといてください!」

俺は猫を胸に抱き、鑑識課へと走り出した。

 

 

完。

 


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