その翌日。
ここはプロジェクトチーム室。
終業のチャイムが鳴ると同時に、
「お先に失礼しま〜す♪」
黒沢がカバンを持って席を立ったのを、村上が腕を掴んで食い止めた。
「てめぇ、そんなに急いでどこ行くつもりだよ?」
「え〜?桜見に〜。」
「桜目当てじゃねぇだろお前!昨日の昼間はアホのひとつ覚えみたいに『桜』『桜』って連呼してたクセに、昨日店でバーテンしか見てなかっただろ!」
「お前だって車の中でバーテンの話ばっかりしてただろ〜?!」
揉め合うふたりの間を割って、
「お先に失礼します。」
北山がさっさと去っていく。
「くそ!あいつもか!」
「抜けがけさせるかぁ〜!」
村上と黒沢も慌ててその後を追った。
そんな3人の後ろから、赤塚不二夫のマンガのようにシャカシャカシャ〜ッと見えないほどの高速で足を交互に前へ出し、Ohモーレツなスピードで駆け抜けてゆく酒井。
これに負けじと追う3人の足も、自然と赤塚チックな動きへと変化している。
4人でシャカシャカシャ〜ッと走って本社ビルのエントランスを出ると、そこには車に乗り込もうとする安岡の姿が。
ドアを開けた運転手に安岡が告げた地名は、もちろん・・・
「あっ、専務待っ・・・」
バタン。ブゥン!!
すばらしい出足で黒塗りの高級外車は去っていった。
「行っちゃった・・・」
「あンの専務め・・・特権使ってちゃっかりおいしい目しようとしてんじゃねぇか・・・」
しばし呆然と車を見送っていた4人だったが、「こんなところで時間をムダにしている場合じゃない!」とばかりに、再び駅に向かってシャカシャカシャ〜ッと走っていったのだった。
おしまい。