プロジェクトG
「・・・人事部としましては、このような人事配置を提案いたします。以上です。」
「ということだそうだ。皆、異論はないな?・・・では次の議案・・・」
「社長。」
淀みなく進む会議の流れを断ち切るようにひとりの男が挙手をする。
「何だ、優。」
「社長、社内でその呼び方はやめてください。」
「おぉ、すまんな、つい癖でな。何だ、安岡専務。」
「人事部の案、私は反対です。」
「な、何故でしょう、ぼっちゃま・・・」
「人事部長、その呼び方やめてください。」
「はっ・・・す、すいません・・・」
「社長。この件、私にまかせていただきませんか?」
「ああ、別に構わんが・・・」
「人事部長も。いいですね?」
「あ・・・はい・・・」
「では会議を進めてください。」
12月25日。営業部2課。
「うぇ〜・・・気分悪・・・」
「どうしたんだよ、村上。」
「どうしたもこうしたもねぇよ・・・昨日のA社の接待・・・向こうの部長がザルでよぉ・・・飲み負けちまった〜・・・」
「お〜お〜、クリスマスイブだったっていうのに・・・お疲れさん。」
「ホントだよ・・・彼女は『こんな日まで接待なんて!(女声)』ってカンカンだしよ〜・・・」
♪ぷるるるるっ
「お、内線?・・・見慣れない番号だな・・・」
がちゃ。
「・・・営業2課村上っす・・・」
同日。経理部。
「北山さ〜ん。お願いしますよコレ〜。何とか経費で落としてもらえませんかね〜?」
「無理です。会社規則で決められてますので。」
「そこを何とか〜。」
「ダメなものはダメです。」
「そんな〜・・・」
♪ぷるるるるっ
「電話が鳴ったので、そのお話は終わりです。」
♪ぷるるるるっ
「この番号、重役クラスだな。また愛人とのデート費用を経費で落とせとか言うのかな。もちろん断るけど。」
がちゃ。
「はい、経理部北山でございます。」
同日。総務部。
「がぁっ!何度も言ってんでしょう!50枚以上印刷する時はコピー機じゃなくて印刷機を使ってくださいって!
コピーは紙もトナーも高いんですから!頼んますよ、もうっ!」
「はぁ・・・次から気をつけます・・・」
「次からってねアナタ、営業1課はいつもそうなんですよ。帰る時は電気は消してない、個人情報載った書類はそこら辺に置きっぱなし・・・
そういうところからねぇ情報漏洩につながって・・・って話はまだ終わっとらん!話の途中で帰」
♪ぷるる がちゃっ
「はい〜っ総務部酒井ですがっ!」
同日。重役フロア内専務室。
♪ぷるるるるっ
「黒沢さん。恐竜ばっかり見てないで。電話出てください。」
「あっ、はい!」
がちゃ。
「はいっ!専務室でございますが〜!・・・はいっ・・・はいっ・・・いつもお世話になっております〜!
・・・はいっ・・・はいっ、少々お待ちくださいませ〜♪」
♪ぽろぽろぽろぽろりん〜(保留音:エリーゼのために)
「安岡専務っ!ニューヨーク支社長からお電話ですっ!」
「支社長に『いつもお世話になっております』って言わなくていいから。・・・はい、もしもし。・・・お疲れさまです・・・はい・・・」
「今日の夜は何カレーにしようっかな〜・・・」
「・・・わかりました。報告ありがとう。」
がちゃん。
「黒沢さん。」
「ほへ?」
「お話があります。」
「ほへ?」
「・・・返事は『はい』と言いなさい。」
「はへはれてうんれ〜(飴食べてるんで〜)」