用水路にかかる橋は、人ひとり通れるほどの小さなものだ。
5人同時にそこへ乗って・・・というワケにはいかない。
よって、橋の上から3人が、そしてその左右からひとりずつ笹舟を流すことになった。
「こんな大勢で笹舟レース初めて〜!」
「『笹舟』を『5人』で!まさに『SG競走』!」
「競艇かよ!」
「で、誰キッカケ?」
「じゃこのレースの発案者である北山がスターターも兼ねろよ。」
「うん、わかった。じゃ、みんな準備して。・・・On your
mark・・・」
5人は真剣な面持ちでその場にしゃがんだ。
「Get set・・・」
笹舟を水面に浮かべ、指を離すキッカケを今か今かと待つ。
「・・・Go!」
北山の合図で、皆一斉に笹舟から手を離した。
5つの笹舟は水流に乗って進んでいく。
「おっ、いいスタート!」
「行けぇ〜!」
「差せ!」
「マクれ!」
「そのまま!そのままっ!」
抜きつ抜かれつを繰り返しながらゴールへと向かう5艘の小舟を、5人は追っかけながら声援を送る。
酒井はカメラで撮影することも忘れていない。
ゴールまであと数メートルに迫ったその時。
横から大量の水が激流となってコースへと合流してきた。
笹舟は瞬く間に渦に巻き込まれ、再び浮上してくることはなかった。
「・・・・・・。」
5人は、思いもよらぬハプニングと、テンションが上がりきる寸前にレースが強制終了しまったことで、しばしその場で固まっていた。
一方その頃、楽屋では。
「あれ?誰もいないし。メンバーどこ行っちゃったんだろ。・・・誰か知らないか?」
「さぁ〜・・・僕は何も〜・・・」
「僕も聞いてませんね〜・・・」
「そろそろ着替えを始めてもらいたいんですけどねぇ・・・。」
「しかもまだ誰もスイカ食べてないみたいですね・・・ラップして冷蔵庫に入れときましょうか。」
「あ、そうしてあげて。」
開演時間が刻一刻と迫る中、スタッフ一同 気を揉んでいたのだった。
おしまい。