魔の時間
現在レコーディング合宿の真っ直中。
各メンバー、それぞれ夜中まで作業している関係で、特に昼下がり、ランチ後は睡魔と闘う、まさに「魔の時間」となりつつある。
黒沢が夕食の仕込みを早々と終え、休憩室がわりになっているロビーを横切った。
「げ?!何やってんのこいつ?!」
ロビーに置かれた大きなソファのひとつに上体だけを預けるように突っ伏して、気持ちよさそうに爆睡している村上の姿に驚きの声を上げる。
「よくこんなキン肉マンがおならで空飛んでるようなポージングで寝れるな・・・っていいこと考えたっ!」
黒沢は足音を立てないようにどこかへ走り去り、すぐさま戻ってきた。
その手には油性マジックが握られている。
抜き足差し足で村上に近づき・・・
「・・・『肉』、っと。」
村上の額に『肉』の字を書いた。
「ぷっ・・・似合う・・・」
黒沢は歯を食い縛るようにして声を抑えてひとしきり笑った。
「じゃ、俺もちょっと寝よ〜っと。」
村上から離れ、空いたソファに腰かけた黒沢は静かに目を閉じた。