Poker Face
ここはゲスト出演するイベントの控え室。
5人で1部屋ではあるが、ひろびろ快適空間だ。
控え室のテーブルの上には差し入れの洋菓子・和菓子だけではなく、スナック菓子がたくさん置かれている。
スタッフの話によると、今日のイベントには菓子メーカーも協賛しているとのことだった。
それに最初に食いついたのは酒井。
テーブルに歩み寄って、菓子を順にチェック。
「お、今『ヘイポテト』の八丁味噌味なんて出てんのか?!・・・し、知らなかった・・・ちょっといただこうか、な・・・ん?」
『ヘイポテト 八丁味噌味』に伸ばしかけた手を止め、その脇に置いてあったものを掴み上げる。
「・・・・・・」
タバコの箱大のケースより中身を取り出した酒井は、「♪ちゃららららら〜ん」と『オリーブの首飾り』を歌い出した。
酒井が取り出したもの。
そう、それは「トランプ」だった。
「♪ちゃららららら〜ん、ちゃららららら〜らら〜」
パスンパスンパスンと小気味いいリズムを刻みながら、慣れた手つきでトランプをシャッフルする。
あらかた混ぜ終えたところで、トランプの山をふたつに分けてテーブルに乗せ、軽く曲げるようにした角をパラパラパラと重ね合わせた。
そして山の短辺同士を食い込ませるようにしてから、ふたつの山を軽く反らせると、パラパラパラとキレイな動きで山がひとつに合わさる。
「お〜、やるねぇ酒井。」
山の中で修行するヒクソン・グレーシーのようにストイックに筋トレしていた黒沢が、飲み物を取りに来た。
「昔ちょっと練習しましてね〜。」
「へぇ〜。」
シャッシャッとシャッフルする酒井の手元を見ながら、黒沢はノドの渇きを潤している。
「あれ?トランプ?」
次に酒井の元へ寄ってきたのは北山だ。
「お菓子の横にさりげな〜く置いてあったからな。」
「そうなんだ。っていうか、うまいね。」
「昔練習したからな。」
さっき黒沢としたのと同じやりとりを繰り返す。
「修学旅行の時に女子にモテると思って練習したんでしょ?」
「・・・・・・・・・」
「何?酒井、図星?!」
プププと噴き出し笑う黒沢と北山。
顔を真っ赤にしながらシャッフルを続ける酒井。
「ぅを、何だよ酒井、インチキマジシャンみたいじゃん。」
「てか、何で顔赤いの酒井さん。」
次に来たのは、黒沢とは別に筋トレしていた村上と、筋トレをジャマするつもりがついつい本気を出してしまい汗ダクの安岡。
4人に囲まれた状態で酒井のシャッフルは続く。
「なんか、トランプやりたくなってきちゃったなぁ。」
そう北山が呟いた途端、村上・黒沢・安岡はさっさとテーブルに着席。
酒井がトランプを配り出すのを今か今かと待っている。
「・・・んもぅ、わかりましたよ、今配ってあげますからっ。」
追うように酒井・北山も席に着く。
「じゃあ始めますか。」
しゅぱしゅぱしゅぱしゅぱしゅぱしゅぱしゅぱしゅぱしゅぱしゅぱしゅぱ・・・・・・
酒井は、時計回りにカードを配り始めた。
酒井を起点に見て、酒井→黒沢→村上→安岡→北山→酒井・・・の順となった。