≪2等賞編≫
「じゃ、酒井。行くか。車出して。」
「え?あ?」
「早くっ。ほら、行くよ。」
「うわ〜ん、助けてぇ〜っ!!」
誰も助け舟を出そうとはせず、目も合わせない。
叫びも虚しく、酒井は黒沢に強引に腕を引っ張られ、控え室を後にした。
控え室に残った3人が輪になって話している。
「ついに酒井も刑、執行かぁ・・・」
「でもちょっと楽しみではあるよね。」
村上の言葉に、ピカピカの靴を履いた北山が呟いた。
「うん、楽しみ!酒井さん戻ってきたら写メ撮ろうっと!」
安岡が携帯をパカパカしながら、天使のような悪魔の笑顔を浮かべた。
約1時間後。
「ただいま〜。」
黒沢だけが控え室に入ってきた。
「あれ?雄二は?」
北山が黒沢に尋ねる。
「ん?ドアの向こうで待機してるよ。見たい?見たい?」
「見たい見たい!」
安岡が身を乗り出して答える。
「では。」
黒沢はコホンと小さく咳払いをした後、酒井を呼び込んだ。
「酒井雄二く〜ん?」
「・・・はぁ〜ぃ・・・」
張りと抑揚のない返事が聞こえ、ドアがゆっくり開いた。
「・・・ぶっ、あっはははははは〜!最高!アンタ最高だよ!」
「がははははは!何だそのカッコ!それが噂の『セレブ』ってやつか!」
「ちょいワルっ・・・?!」
「こらこら、笑ってやるなよ〜。なかなか似合ってるだろ?」
笑い転げる3人に黒沢は真顔で話し掛けている。
「あえての胸はだけ、」
「あえての襟立て、」
「あえての皮ジャケ、」
「あえてのチーフ、」
「あえてのパツパツ細身パンツ、」
「あえての虫っぽいサングラス、」
「あえてのハンチング・・・。」
「・・・ぎゃっはっはっはっはっはっ!」
「お前らみんな大っ嫌いだ〜〜〜!!」
酒井は夕陽の沈む方向に向かって走り去っていった。
(完)