俺の胸はハリケーン(いろんな意味で。)

 

ここは控え室。

リーダーと鏡の前に並んで座り、顔にブラウンのドーランを塗っていた。

「あ、やってるやってる!」
「へぇ〜、そうやって塗るんだぁ〜。」
「こうやって見ると、結構濃い色だよね。」

まるでチンドン屋の休憩時間にチョッカイを出してくるガキのように、興味津々で3人が覗き込んできた。

 

「あ〜もう、うるせぇよお前ら。気が散るからこっち来んな!」
リーダーが手を止め、後ろを振り返って、シッシッと追い払っている。

「くんくん。」
「に、匂うなよ黒沢!」
「いや、色だけ見てたら旨そうなんで、つい・・・」
「バカかっ!無味無臭だよ!」

「無臭はいいけど無味って!」
年長ふたりのやりとりに、俺はつっこまずにいられない。

「お前まさか・・・この色見てカレー思い出したんじゃないだろうな!?」
「ん〜・・・ちょっとね。」
「恐っ!人食い人種だ!獲って食われる!」
「いや、カレーだけじゃなくてさ、チョコとかコーヒーとか黒糖とか甘酢あんかけとか、そんなんの匂いがしそうだなって。」
「人を“ねりけし”みたいに言うな!」

「リーダー今うまいこと言った・・・と思ったけど、さすがに甘酢あんかけのねりけしはないっしょ!?」

俺はなんでこのふたりについて行こうと決めてしまったのだろう。
時々不安に思うことがある。
今まさにその不安な瞬間を迎えているわけだが・・・。


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