ひなバトル
199X年3月初旬のある日。
新曲のキャンペーンで某FM局へとやってきた5人。
「出番までまだお時間ありますので、こちらでお待ちください。」
番組スタッフに案内されて入った控え室は、いつもの事務的な室内と様相が違った。
出窓に置かれた花瓶に刺さっているのは、桃の枝。
テーブルの上には、ひなあられと甘酒。
事態を把握した5人は一斉に壁に掛かったカレンダーに目をやった。
「あぁ〜、桃の節句ってワケね〜。」
納得の言葉をなぜか5人はハモっていた。
ノックの音がし、ドアに一番近いポジションにいた北山が「はい」と返事しドアを開ける。
「お飲み物、お持ちしました〜。」
さっきここまで案内してくれたスタッフが人数分のペットボトルのお茶を運んできてくれたのだ。
「ひなまつりってことで、今日はこんなカンジに?」
酒井がスタッフに尋ねる。
「えぇ、ウチの局は女性スタッフが多いので、ひなまつりの日は毎年みんな勝手にいろいろ持ち寄ってお祝いするんですよ。
あっ、ひなあられは、○時台にゲストに来られた●●●さんからの差し入れです。」
「へぇ、そうなんだぁ〜。」
安岡が花瓶の桃の花を観察しながら相槌を打つ。
「ではお時間になりましたら呼びに参りますので。」
「は〜い。」「ありがとうございま〜す。」
一礼をして去っていくスタッフに礼を言って見送った5人は、ようやく椅子に腰掛けた。