と、5人の職業と名前を付けた時のことを思い出し終わった直後、はたと気づいた。
手元のゲームは戦闘に勝利した画面とBGMが流れているのに、さっき目覚めた時に耳にしたのは確かに宿のシーンでの効果音。
あれは空耳か?
とりあえずゲーム機を手にして、キャラクターを操り、港町の宿に泊まったところでゲームをセーブ(データ保存)した。
「ふぁ・・・歯磨きしよ・・・」
洗面所に入り、蛇口の横にある歯磨きセットが置かれた前に立つ。
突如として視界の下部に、テレビのテロップのように文字が浮かび上がった。
『はみがきセット を みつけた!
アイテムBOXに いれますか?
はい いいえ』
「はへ?」
何だこれは。
いきなりの現象に、なんとも間抜けな声を上げてしまう。
恐る恐る歯磨きセットに手を伸ばすと、ご丁寧に『はい』を指差す手のアニメーションまで現れた。
♪ぴろ〜ん
『はみがきセット を てにいれた!』
「は・・・はは・・・よくできてる・・・」
鏡には顔を引きつらせた自分の顔が映っていた。
歯磨きセットの袋を開封しようとすると、視界の右側にまたテロップのようなものが現れる。
『アイテム
ステータス
まほう
そうび
たいれつ
マップ
セーブ』
『アイテム』を指差していたマークが一瞬光って、視界いっぱいに俺の持ち物がひらがなとカタカナで表示される。
『カバン×1』『さいふ×1』『けいたいでんわ×1』『けいたいゲーム×1』などと並んで、『はみがきセット×1』も早速アイテムBOXに入っていた。
指のポイントが『はみがきセット』のところまで移動していく。
『つかいますか?
はい いいえ』
使うっつうの。
『はい』が選択される。
シャコシャコシャコシャコ・・・
シャコシャコシャコシャコ・・・
シャコシャコシャコシャコ・・・
グチュグチュ、ペッ。
グチュグチュ、ペッ。
グチュグチュ、ペッ。
『ゆーじぃ は はがきれいになった!』
「わざわざ言わなくてもわかっとる!」
鏡の俺に向かって一喝する俺。