マ「あのね、カオルちゃん。昔はね、アイドルのプロフィールは嘘だらけだったんだよ。
いくら背が高くても巨乳でもぽっちゃりでも、体重は40キロ台まで。絶対50キロ台に乗っちゃいけなかったワケ。ウエストのサイズもしかり。
でも今はそういう嘘では世間は食いつかないんだよ。『作られたアイドル』はもう時代遅れなのよ。
『どこそこ星(せい)から来ました』とか、そんな不思議キャラもお寒いだけなワケ。
アイドルっていうのは、これからの時代は世間から手の届かない存在になっちゃダメ。
見ててこう、親近感が湧くような、そんなオンリーワンアイドルを目指さないと。ね?・・・言ってることわかる?」
マネージャー、上記のセリフを一息に言う。
ア「・・・・・・はいっ」
マ「かと言って、別にホントのことをベラベラ言わなくてもいいワケ。あまり明け透けにしちゃうと神秘性がなくなっちゃう。
すぐに手が届きそうな存在になってしまうと誰も追い求めなくなってしまうもんなのよ。
世間の人が『あ〜、手が届きそうっ、あっ、でも届かないっ、あ〜っ、もどかし〜いっ!』
っていうぐらいのね、絶妙なね、ポジションを、こう、なんつ〜か、細い塀の上を歩くようなね、そんなバランス感覚!・・・ってここまで言ったこと、わかる?」
マネージャー、上記のセリフを一息に言う。
ア「・・・・・・・・・・・・はいっ!」
マ「そのためには少しぐらいの嘘をついてしまっても構わない。多少リアリティが残るように、嘘をうまく混ぜて、ね?
そこはカオルちゃんの腕の見せ所だから。ね?」
ノックのSE。
スタッフ(声のみ)「すいませ〜ん、そろそろ本番で〜す。スタンバイお願いしま〜す。」
マ「は〜い。」
マネージャー、アイドル、椅子から立ち上がる。
マ「今日のインタビュアーはね、アイドルにうるさい人だからね。しっかりね。バランスね、バランス!」
ア「バランス・・・」
アイドル、両手を横に広げて、片足を上げる。
下手よりインタビュアー登場。
そこで立ち止まり、謎のポーズのままのアイドルを不思議そうに3秒ほど見つめる。
イ「・・・おはようございま〜す。」
ア「あっ、おはようございまぁす!」
マ「おはようございます!」
アイドル、マネージャー、深々とお辞儀。
イ「今日インタビューをさせていただきます、安岡です。よろしくねっ。」
ア「よろしくお願いしまぁす!」
イ「じゃあそろそろ始めましょうか!」
下手側の椅子にインタビュアー、上手側の椅子にアイドル、客席を向いて横並びで座る。
マネージャー、上手側の後方へ移動。
アイドル、不安げにマネージャーの方へ何度も振り返る。
マ「(小声で)大丈夫!カオルちゃんなら大丈夫!ファイトっ!」
ア「(小声で)ふぁいっ!」