喫茶「アンジュナ」
☆登場人物
客(黒沢)
喫茶店マスター(北山)
喫茶店ウェイター(安岡)
(暗転〜BGM:『参宮橋』終了と同時に溶明)
ステージ中央、カウンターの中でコーヒーカップを拭くマスター。
カウンターに寄り掛かり、暇そうなウェイター。
その客席寄りにテーブルと椅子2脚。
下手からふらりと客現れる。
客、神妙な面持ちで店の外観・看板などじっくり見た後、店入り口へ。
客「♪からんころんか〜ん(↑)、からんころんか〜ん(↓)」
ウ「自動ドアですけど〜?」
客、店に入ってすぐ立ち止まる。
客「(アカペラ独唱)♪も〜ぉ終わ〜りに〜す〜るぅわ〜、席を立ぁつあなたの〜よこ〜がお〜、
去ぁって〜ゆくせ〜なかにか〜けること〜ばを今でも〜」
マ・ウ「♪捜〜し〜てる〜」
マ「(ぼそっと)いらっしゃいませ。」
真顔のマスター。
ウ「お好きな席へどうぞ〜。」
営業スマイルを見せて客に言うウェイター。
客、店内を見渡し、上手側にある椅子へ向かい、腰掛ける。
ウェイター、トレイにコップを乗せ、テーブルへ運ぶ。
ウ「ご注文は?」
客「(アカペラ独唱)♪いつぅでもこの店ぇで〜、他愛な〜く笑い合〜っていた〜、
同じ〜未来〜を見てい〜たひ〜びも〜今〜は遠く〜」
マ・ウ「♪流〜れ〜てく〜」
客「・・・いつもの。」
ウ「え?」
客「いつものやつ。」
ウ「・・・お客さん、初めてですよね?この店・・・」
客、引き続き神妙な面持ちのまま。
ウ「・・・無視かよ!」
マ「安岡くん、これ。」
ウェイターにメニューを渡すマスター。
ウェイター、客にメニュー手渡す。
ウ「すいませぇん、『いつもの』じゃわかりませんので、これ・・・」
客、黙ったままメニューに目を通す。
しばしメニュー見つめた後、メニューを閉じる。
客「・・・カレーライスで。」
ウ「・・・いつもカレーなんすね・・・かしこまりました・・・」
ウェイター、客からメニュー受け取る。
ウ「カレー、ワンで〜す。」
マ「はい。」
マスターカップを拭く手を止め、鍋に火をかける動作。
おたまでかき混ぜる。
ウェイター、マスターの前に立ち、耳打ち。
ウ「なんか変なのが来ちゃいましたね・・・」
マ「ま、いいんじゃない?たまには。」
マスター、相変わらず真顔。
ウ「『たまには』ねぇ・・・」
しばし沈黙。
客、客席(窓の外)をじっと見つめている。