「なぁ、ももちゃん。男は身長よ?」
「なっ?!子どもに何言ってんだ村上〜!」
「ももちゃん、勉強できる男の子とか、どう?」
「北山ぁっ?!」
「体育できる男の子ってかっこいいよね?」
「こらっ、安岡まで何言って・・・」
「ゲームうまいとかはどうだ?ん?」
「ちょ、酒井、そのアピールは正直どうなんだ?!」
4人からの必死のアプローチに、当のももちゃんはキョト〜ンとしちゃっている。
一方、ご両親はクスクス笑っている。
俺はももちゃんの視線の高さに合わせるようにしゃがんだ。
「ありがとうね。」
「うん!」
俺的にさっきの『ありがとうね』は、『俺を選んでくれてサンキュー』なんだけど、さすがにそれはイタすぎるので、『今日は来てくれてサンキュー』って意味で言ったことにしておいた。
「それではこの辺で・・・。お忙しいところ、お邪魔してすいませんでした。」
ももちゃんのご両親が俺たちに頭を下げた。
「いえいえ、こちらこそ遅くまですいません!今日はありがとうございました〜!」
「いえいえ、こちらこそステキな歌をたくさんありがとうございました。」
ももちゃんを挟んで、5人と2人がペコペコと頭を下げる妙な光景。
ももちゃんはそれを不思議そうに見上げた後、「ありがとぉございましたぁ。」とちゃんとお礼を言ってくれた。
バイバ〜イ、って手を振って俺たち5人はももちゃん親子を見送ったのだった。
ももちゃんからもらった絵は、その後 額に入れられ、事務所の日に焼けなさそうなところで、なおかつ目を引く場所にちゃんと飾られた。
「いい絵だなぁ・・・」
絵の前に立ってそう呟くと、隣に立っていた酒井が「そうっすねぇ〜。」と同意した。
「ホント、みんなの特徴掴んで上手に描けて・・・ん?・・・何これ??」
「ん?どうしました?」
「ほら、これこれ・・・」
「どれどれ・・・」
俺が指差す場所は、髪の毛ツンツンの人物のポケット。
そこから何かが覗いている。
「・・・あ!」
「ん?何?酒井、わかったの?」
「これね、」
「うん、」
「・・・魚肉ソーセージです!」
「はぁ?」
「・・・ぶっ・・・ぶぁっはっはっ!いやぁ、ももちゃんよく見てるなぁ!
俺たち4人と、黒ポンのカッコしたくろ君がね、公園で初めてももちゃんに会ったじゃないですか。
その時にくろ君、車の中で嬉しそうに魚肉ソーセージむさぼり食ってたんですよ!ははははは!ももちゃんすっごい記憶力!」
何だよ・・・せっかくももちゃんに好きだって言ってもらったけど、ももちゃんにとってはその奇行も込みで『すき』だったのか・・・
鼻高々だった俺の天狗の鼻が、ポキリと折れてしまった瞬間だった。
それでも、猫の俺も人間の俺も両方一緒に描かれているこの絵は、俺にちょっとしたお得感と優越感を与えてくれたのだった。
das Ende