≪番外編≫die nächste Folge(ディ・ネーヒステ・フォルゲ)
東京から飛行機で1時間半ちょっと。
俺たちは、ももちゃんの住む街へと到着した。
チケット発売よりも早く ももちゃんとご両親の席を押さえ、5人からの手紙を添えてももちゃん宛てに送ってある。
今日のライブに来てくれるはずだ。
みんな口には出さないけど、いつも以上に嬉しそうで、いつも以上に気合いが入ってる。
「ももちゃん、ちゃんと来てくれるかなぁ。」
楽屋でヘアメイクをしてもらいながら呟くと、隣にいた安岡が「来てるって。間違いないよ。」と自信たっぷりに笑う。
「楽しみだな。頑張ってももちゃんが楽しんでくれるライブにしないとな。」
照明が落ち、バンドの演奏と同時にステージに飛び出していく。
会場1階の2番目のブロックの最前列のど真ん中。
パパとママに挟まれて、小さい手を一生懸命振ってくれている。
小さい子どもでも見やすい場所。
こっちからもももちゃんの嬉しそうな顔がばっちり見える。
なんてったって俺の命の恩人だからね、特別待遇なのだ。
ライブの中盤、MCの場面で少し時間をもらった。
一歩前に出て、俺たちの小さな『友達』に向け、語りかける。
「今日は、会場に来てくれた僕たちの大切な『お友達』のために、特別に1曲歌いたいと思います。」
後ろを向いて合図をすると、バンドのみんなが演奏を始めた。
予想外の曲のチョイスに、ざわめく客席。
当たり前だ、俺がももちゃんと一緒に見たアニメの主題歌なのだから。
アニメ声で歌う村上と安岡。
酒井と北山もアニメのオープニングの映像をマネして踊っている。
これには会場も大盛り上がり。
ももちゃんも歌っているのだろうか、大きく口を動かしながらカラダを揺らしてノッている。
歌い終わると会場のお客さんがみんな笑顔で拍手喝采。
ももちゃんもいっぱい拍手を送ってくれた。